多読・Tadokuの知りたいことすべて(脱力系)
最近は英語の授業に多読を取り入れている高校や大学が増えていますので、この春から洋書を英語で読み始める人が増えるかもしれません。ここで気になるのは、やはりお値段、じゃなくて、英文の難易度です。国公立大学に合格した大学1年生でも、大型書店に置いてある英書を気軽に手にとって最後まで読了できる人は少ないでしょう。
多読授業では通常、英語学習者向けに編集されたgraded readersを読むことになると思います。Oxford Bookworms Library、Pearson English Readers、Macmillan Readers、Cambridge English Readersなど大手出版社が出しているグレイディッド・リーダーでは、文法事項やヘッドワード数に基づいて7段階のLevel/Stageに分類していることが多いです。
それ以外に、英語話者(イギリス人やアメリカ人)を想定読者にした児童書を読む場合は、ATOB Book LevelやLexileやYLなどのReadability値(読みやすさの指標)を参考にして選ぶと良いでしょう。
一方、「NPO多言語多読」では、一冊あたりの総語数によって本を色分けしているそうです。たとえば1冊1000~5000語の本はオレンジ、5000~10000語の本は黄色です。そんな大雑把な分類で本当に良いのでしょうか(苦笑)。
X(Twitter)では、buddy readingが定期的に行われています。洋書歴が長い誰かが声をかけ、同時期に同じ本を複数の人が読んで意見交換する活動です。今月はUrsula K. Le Guinの「Catwings」を読むそうです。この本は2906語なのでオレンジ色の本になります。
ちなみに、同著者の「The Ones Who Walk Away from Omelas」は2810語なので、これもオレンジ色の本です(笑)。世界的なSF作品賞であるヒューゴ賞を受賞した作品がオレンジ本という扱いで本当にいいのかな。総語数は少ないけど、ATOS Book Levelは6.3ですよ。
非常に短い作品なので粗筋を書くのは避けますが、utilitarianism(功利主義)について考えされられる物語です。SF小説ですが哲学書と解釈することもできます。YouTubeに朗読があるので、それを聴いても良いでしょう。
短編の中には明確なオチがなく、「この本のどこが面白いの?」と疑問に感じることも少なくありませんが、本書はさすがヒューゴ賞受賞作品だなーと感心しました。Amazonのカスタマーレビューでも非常に高評価なので多くの人に勧めたいところですが、Ursula K. Le Guinの本はいずれも語彙難易度が高いです。Catwingsでも、語彙レベルは英検1級と同程度です。