#32 心の傷を癒すということ(2020)-心療内科のルーツがここに!
名作中の名作です。以下、紹介文です。
阪神・淡路大震災発生時、自ら被災しながらも、他の被災者の心のケアに奔走した若き精神科医・安克昌(あん・かつまさ)氏。手探りながらも多くの被災者の声に耳を傾け、心の痛みを共に感じ、寄り添い続けた日々。震災後の心のケアの実践に道筋をつけ、日本におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の先駆者となりました。在日韓国人として生まれ、志半ばでこの世を去りながらも、険しい道を共に歩んだ妻との「夫婦の絆」と、彼が寄り添い続けた人々との「心の絆」を描きます。
以前なら「精神病」と単純化されていた心の傷に光を当てたのが安克昌先生であり、その契機になったのが阪神大震災でした。その本質が、50分×4話という時間枠の中に濃縮されています。
柄本佑さん演じる安先生のこの表情にすべてが凝縮されています。初回では、アイデンティティへの揺れ、厳格な父親との対峙、ジャズピアノとの出会いなどが描かれ、その後、奥様(尾野真千子)との出逢い、震災、被災生活、被災者の診療、父親(石橋凌)との和解、闘病生活などを通して、PTSDと真摯に向き合う姿が描かれます。
全話のタイトルが秀逸
①神戸、青春の街 ②僕たちの仕事 ③見えない命綱 ④残された光 の順に続きます。ジャズの街・神戸を舞台に、心療内科の先駆者として、命尽きるまで診療に尽力された壮絶な人生が伝わってきます。仕事を名目に、神戸のジャズ喫茶に通い詰めたり、震災を経験した私にとっても、格別なタイトルです。
感動の最終話
最後の舞台はルミナリエでした。安先生を偲び、ご家族が光の回廊を歩かれる際、安先生の幻影に気づいたかのように、奥様(尾野真千子)が振り向かれるシーンが印象的でした。基本的にすべて俳優さんたちが演じられるのですが、最後のシーンだけは、安先生のご子息が出演されていたような気がします。余韻が溢れ出ており、何度も見返した記憶があります。心の病みへの理解が深まりつつある今だからこそ、すべての人に見て欲しい名作です。