#131 フリーター、家を買う(2010)-正統派ホームドラマ
TVer 長すぎるけど的を得た紹介文
3カ月で就職先を辞め、その気になればいつでも働けるという甘い考えのまま家にひきこもって、だらしない生活を送っていた誠治(二宮和也)だったが、ある日母親がうつ病をわずらっていることを知る。母親の寿美子は、無関心な家族の態度や近所からの陰湿ないじめに静かに耐え続けた結果、かなり重度のうつ病にかかっていた。家族のサポートや、ストレスを排除することが重要だと医者から言われるが、典型的な企業戦士だった父親の誠一は、その事実を受け止めきれず、母を気づかうどころか、家から逃避してしまう。母の一番の理解者である誠治の姉の亜矢子は、数年前に埼玉の開業医に嫁いでおり、嫁ぎ先での人間関係や息子の育児に悩みは多いものの、自分が出た後の武家を、そして自堕落な弟をとても心配している。そんなふがいない長男・誠治に、突如現実が押し寄せる。ひょっとして、オレが大黒柱? しかし誠治の就職活動は失敗続きで、ドロップアウトした者に対する社会の厳しさを思い知る日々が続く。生活のためと、とりあえず給料の良い土木工事現場での肉体労働のバイトを始めることにした誠治。そこで生き生きと目標に向かって明るくたくましく働く千葉真奈美(香里奈)や上司に出会い、「人生」や「働く」ことの意味に気付かされる。自分には「このためにがんばる。」という目標が必要だと考えた誠治は「フリーターだけど、オレは家族のために家を買う!」事を決意。無謀ともいえるこの目標ははたして、達成できるのか?バラバラだった家族はひとつになれるのか?誠治の人生再出発がはじまった。 「人生」はいつだってやり直せる!今からでも遅くない。気付いた時から、がんばればいい!温かくて優しい家族の本当の再生がここにある。「家族ってこんなにも、いいものなんだ。」と気付かせてくれる21世紀版新しい社会派ホームドラマが今、誕生する!
まさに「暖かくて優しい家族の本当の再生」
アイドル全盛期の嵐・二宮和也が主演で、オープニングテーマが西野カナ、エンディングテーマが「果てない空」(嵐)ときたら、当然、ファン向けの視聴率狙いのドラマだと思っていたら、まさかの正統派・ホームドラマでびっくりしました。内容は上記の紹介文に譲るとして、ニート生活、日雇い労働、ママ友によるいじめ、鬱病、家族の崩壊、格差など、現代社会に巣くうあらゆる病理が描かれた深いドラマでした。
キャスティングが見事
ひたすら無気力なニートから母親想いの息子に変わっていく主人公に二宮和也、ママ友からのいじめに鬱を発症する母親に浅野温子、開業医の家に嫁いだことで肩身の狭い思いをする姉に井川遥、本心をうまく伝えられない頑固親父に竹中直人、工事現場でニッカポッカを着こなす男気溢れる設計士・真奈美に香里奈。よくぞここまで見事なキャストを充てたものです。特に誠治の無気力ぶり、お母さんの鬱の進行状況にはリアリティがありました。
ちょい役で抜擢された児島一哉
誠治が通うハローワークの嫌味な職員役を演じたのがアンジャッシュ・児島一哉さん。ちょい役でしたが、毎回のように早口で誠治を小ばかにするシーンが結構、効いていました。このドラマが放映された2010年はアンジャッシュのすれ違いコントが全盛期で、相方の渡部健さんがブレイクしかけていた頃でしたので、スタッフに先見の明があったと思いますね。
SPも良かった!
実家から絶縁されていた両親(竹中直人、浅野温子)の結婚式、真奈美(香里奈)とその母親(風吹ジュン)との関係性の回復、そんな家族の在り方を見守りながら自分たちの遠距離恋愛を見直す誠治と真奈美。真奈美が和歌山に戻ろうとするラストシーンの会話も絶妙でした。
真奈美 そろそろ行かなきゃ。
誠治 もう一本、バスを遅らせないかな?
あとちょっとだけ一緒にいたいんだよな。
明日も、明後日も、もうずっと。
真奈美 私も。
不器用な誠治がはじめて真奈美に本音をぶつけた瞬間でした。ほんま、ええドラマやで。