雨粒の中の世界 @50
相変わらず雨が降っている。
傘を置き去りにして歩いてみる。
レンズに張りつく水滴が視界を遮るので眼鏡を外す。
弱くて小さな雨が落ちる。
それでも首にかけたタオルがたっぷりと濡れてきたので絞って顔と頭を拭う。
側道の緑も濡れている。
歩を止めてしゃがんでみた。
ただ、
それだけのことで宇宙は無限に凝縮された。
草の先に溜まった雨粒、
蜘蛛の巣から落ちる雨粒、
ハマユウに張りつく雨粒、
その透明な宇宙に反射されて雨は山の彼方に消えた。
雨粒の中から小さな宇宙が弾けた。
再びタオルの水分を抜いて顔と頭を拭いた。そして眼鏡を掛けなおし、置き去られた傘の元へと戻った。
傘を広げた。
放たれた宇宙からまた新たな雨粒が落ちてきた。