★国語教師(64)
自分の授業のレベルアップをするため、いろんな先生の授業を教科に関係なく見学するというのは教師にとって良い経験になりますね。阿部校長は都内の私学数校と授業見学に関する協定を結んでおり、我々現場の教師は自由にいろんな学校の、いろんな先生の授業を見学することができます。
学内のサーバーに見学した授業の感想を投稿するルールがあり、
○年○月○日、
自分の氏名、
見学した学校名、
学年、
教科名、
授業の長さ(分単位で記載)、
教諭の氏名、
授業を見学した感想、
以上を書くルールなんです。
データは膨大で、それを長太郎がデータベース化して自由に検索できるようにしたら阿部校長が「すごいね、これは便利だ」とたいへん喜びました。校長が「息子さん、うちに就職してくれないかなあ」と真顔で言うのでそのまま長太郎に伝えたらけっこう喜んでましたよ。可能性があるかもしれないですね。
このアプリで
「漱石 こころ」
をキーワードにして検索すれば過去、夏目漱石の「こころ」を教材に使って授業をした他校の先生についての、うちの先生の感想文が出てきます。
教材を撮影してPDF化したデータベースもあります。うちの先生が「この教材、いいな、欲しいな」と思い、他校の先生に交渉するわけです、この教材、譲って頂けませんか、と。その申し出を断る先生は滅多にいないですよ。
阿部校長はオーナー一族と交渉し、学内に映像制作室「Dream Studio」、略称ドリスタを作りました。映像制作に使う機材は高価なので投資額は億を超えたと聞きました。
我々はドリスタのマネージャーと相談し、生徒教育に役立つビデオを大量に制作しました。このスタジオに就職したいという生徒まで現れました。
湯川先生の地理の授業をドリスタのスタッフが撮影し、YouTubeに投稿したら一週間で再生回数100万を超えました。有名人が「この人の話は分かりやすくて面白い」とXやInstagramで紹介してくれたんです。
それにしてもすごい時代になりましたよね。全く無名の湯川先生が一週間で有名人になった。これはある意味、夢のある時代と言えそうです。
ドリスタはスタッフを増やして日々大量の教材を制作しています。そして阿部校長はそれを売るビジネスもやりはじめました。ドリスタCompanyという別会社を新宿に作り、佐藤さんという、テレビ局出身の人を社長にして、新しいビジネスがスタートしました。ドリスタで副業として教材作りをやりたい先生は自由にやって良いことになりました。
動画を見てなにか難解なことを理解する体験というのは特に悪いことではないと思いますが、難解な文章をウンウン唸りながら必死に理解しようと努力する体験というのも大事だと思いますね。難解な文章を読むことにより、頭に強い負荷をかけることになりますので脳みそがかなり活性化すると思います。
動画視聴の場合、脳の中の、想像力を発揮する部分の活動が低下しますので分かりやすい動画ばかり見るというのは知能開発の面で課題が少々あるのかな、と。たまには難解な文章にも挑戦、というのがよろしいと思います。