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2022年2月の記事一覧

私の本棚

私の本棚

 うちの両親は、子の買いそろえた本を、平気で捨てたり勝手に人にあげたりすることがある人だった。
 今ならいろんな人から同情される事案であろう。それでも彼らには彼らなりの理由があったのだと思う。私は、家に帰ったらゴロゴロ寝転がって本ばかり読んでいる軽度の活字中毒者だった。両親は多分「余計な趣味に時間を使わなければ、その分勉強の時間を増やせる」と単純に信じていただけで、基本的に善良で真面目な人達だった

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父との会話の記憶・復員兵の選択

父との会話の記憶・復員兵の選択

 私が小学生だった頃。
 その夜いつものように、家族で夕食の卓を囲んでいました。

 小学校の授業の一環で、クラスの中でお遊戯会の出し物のようなことをすることがあって、当時私は、劇の台本を書くことを任されることがよくありました。
 当時から、完全オリジナルで作り上げることができるほどの才は無く、勢い、童話や昔話をベースにちょいちょいといじって別物にするという手法はこの頃すでによくとっておりました。

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カレーを食べたい日の私

 カレーを無性に食べたくなることがある。
 手軽にレトルトを温めるのもいい。
 たまには、愛想がいいんだか悪いんだかわからないインド人がやっている店のチキンカレーに、ナンをちぎって浸して口に放り込もうか。
 しかし、いちばん厄介なのは、「何かそんな気分じゃない」と思ってしまったときである。
 作るしかないじゃないか。

 とはいえ、私は、カレーを「作りたい」わけじゃない。
 カレーを「食べたい」の

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「詩」というもの/谷川俊太郎

「詩」というもの/谷川俊太郎

 僕が小学校に行ってた頃ね、日本は戦争してたでしょ、戦地の兵隊さんに手紙を書きましょうなんて宿題が出るわけ、僕は何書いていいかわからないんだ、母にそう言うと、自分のことを書けばいいのよと言われる、そこでまた困っちゃうんだ、自分のことって何書けばいいのって言うと、遊んだことでも、勉強したことでもなんでもいいのよと母は言う、そうすると頭に浮かぶのは、朝起きて顔を洗って朝ごはんを食べてみたいなこと、子供

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