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下書き再生工場を休む前に
先週お伝えしたとおり、しばらくの間この再生工場を休みます。いま24話まで公開しており、あと数話分の下書きがあるのでキリのいいところまでは書き上げてしまおうかなと思ったのですが、そうしてしまうとキリがなくなると思いここで休むことにしました。
はじめて書いた作品が「ぜんぶ更年期障害のせいだ」。それを公開したのが9月17日でした。そして24作目の「あなたのスキを数えましょう」を公開したのが11月7
第24話 あなたのスキを数えましょう【下書き再生第二工場】
仕事を終えての帰り道、混み合った電車に揺られながらふと、今日も妻は不機嫌なんだろうかと思った。結婚して十年目になる私たちの夫婦関係は昨年あたりからなんだか居心地の悪いものになっていた。さほど親密なわけでもない隣人の玄関に立っているほどの居心地の悪さではないにしろ、何となく気まずい空気を感じることが増えた。理由ははっきりしない。だが、きちんと向き合う必要があるということだけは分かっていた。
た
第23話 僕たちはどうイキるか【下書き再生第二工場】
渋谷でジブリの新作「君たちはどう生きるか」を観た帰り、お腹が空いたよねと藤田が言うからマクドナルドに寄った。店内は大勢の若者たちの嬌声や賑やかな話し声のせいで動物園の猿山のような賑わいだった。
そんな賑わいをみせるマクドナルドの3階の窓際のカウンター席に並んで座った。お互いの視線のやり場に困ることがある向かい合わせにならずにすんで少々ほっとした。
私は藤田に特別な好意は無い。でも困ったこ
第22話 子育てアイデア【下書き再生第二工場】
日付が変わるころに仕事を終えて、職場から家に帰ると妻がリビングルームでぐったりしていた。
床に座りソファにしなだれかかるようにしている妻をみて、俺は胸を締め付けられる思いがした。妻がぐったりと疲れ切っている理由は聞かなくても分かる。育児が大変だからだ。そのストレスが目に見えて妻の心身を蝕んでいる。それに対して俺は無力だ。あまりにも無力だ。
「すまんな珠季。俺が不甲斐ないばかりに」
そ
第21話 noteクリエイターになる為の視点【下書き再生第二工場】
今回このお題で何かを書くにあたってクリエイターという言葉の意味をもう一度確かめておこうと思い立ち、調べてみた。
なるほど、クリエイターとは職業の一種であった。わたしはクリエイターとはただ単に「モノを生みだす人」のことだと思っていたが、クリエイターの役目とはクライアントの要望に応え報酬を得ることが最前提であり、モノを作ること自体が目的の人はアーティストと呼ぶらしい。わたしはこの二つを混同してい
第20話 テレビと喧嘩【下書き再生第二工場】
大学の正門の向かいにある古びた喫茶店でわたしと吉岡先輩はテーブルを挟んで向かい合って座っていた。店内は退屈を持て余しているであろう学生達で満席だった。
「先輩。ついにわたしは双方向コミュニケーションが可能なテレビを開発することに成功しました」
わたしはそう言いながら吉岡先輩をみて反応を伺ってみたが、興味を示してくれそうな様子ではなかった。
「俺テレビ観ないしそういうのには興味ないんだ
第19話 体は人間、知能はニワトリ【下書き再生第二工場】
最近知ったのだがニワトリは賢いらしい。ニワトリは三歩歩けば覚えたことを忘れると聞かされて、またそれを信じていたからニワトリは賢いという事実を知ったときは大変驚いた。それと同時にエビデンスもクソもヘッタクレもない実にいい加減な情報が流布していることが如何に多いかということを改めて感じた。
さて、そんなニワトリさんだがどのくらい賢いかというとなんと足し算が出来るらしい。足し算が出来ると言っても1
第18話 地球とグルグルバット【下書き再生第二工場】
大学の正門の向かいにある喫茶店は暇を持て余した学生達の溜まり場だ。大人ぶりたい学生達の煙草の煙が充満する店内で、俺は藤田とテーブル越しに向かい合って次の講義まで時間を潰していた。
流行りのフォークソングが流れる店内で、いままで黙り込んでいた藤田が口を開いた。
「吉岡、笑わずに聞いてくれるか」
藤田はいつになく真面目な顔をしていた。
「いや、場合によっては腹の底から爆笑してやる」
第17話 ゆるくスポーツに向き合ったっていいじゃないか【下書き再生第二工場】
うさこはスポーツが嫌いだ。幼少の頃からずっと嫌いである。うさこは運動神経が悪い。縄跳びも出来なければスキップすらも出来ない。ましてや球技なんて当然出来るわけが無い。だから体育の時間はうさこにとっては地獄であった。
子供は運動でも勉強でも、出来ない人間に対して容赦がない。
うさこは辛うじて勉強は出来たがスポーツはからきし駄目なせいで仲間はずれにされるどころかいじめられることもあった。ドッジ
第16話 盛岡冷麺について〜ソウルフードとは何者か?【下書き再生第二工場】
小西課長から同期の佐々木と一緒に案件を進めるようにという指示があったのが二ヶ月前のことだ。ところが佐々木とは衝突ばかりして仕事は全く進捗していないどころかこのままでは同じチームのみんなにも迷惑をかけてしまいかねない状況に陥っていた。
「野村と佐々木、今夜飯でも食いに行こう」
ミーティングが終わったあとで小西課長から声をかけられた。チームの皆にも迷惑がかかるだけではなくこのままでは僕の評価
第15話 8周目の人生を生きてます【下書き再生第二工場】
取引先の近くの喫茶店で次のアポまでの時間をつぶしていると、テーブル越しに座っている藤田が口を開いた。
「なあ吉岡、お前の人生は何週目だ」
急に言われても咄嗟に答えは出てこないよと答えながらも、しばらく考えてからそうだ八周目だと思いだした。
「八周目だな。藤田、おまえはどうなんだ」
「俺も八周目だ」
藤田がそう答えた。じゃあ俺と同じじゃないか。そう思った俺は藤田に言った。
第14話 脳内家族を紹介します【下書き再生第二工場】
昼の休憩時間に同僚の派遣社員同士が集まっていつものように雑談をしていた。この職場に三日前に入社したばかりのわたしは端の席に座り、先輩方の会話を聞いていた。
するとこのグループのボス格である村田女史が夫の自慢話を始めた。どうやらこれはいつものことらしい。だから皆もまたかというような顔をしながら適当に相槌をうったり大袈裟に驚いたりして調子を合わせている。そんな村田女史は皆のお世辞をわざとらしく否
第13話 私のエッセイは全てAIが書いてます【下書き再生第二工場】
仕事の依頼がすっかり途絶えて暇を持て余していた私に、ある週刊誌からエッセイを連載しないかという話が舞い込んできた。
誰もが知る有名な出版社が刊行している成人男性向けの週刊誌だが、発行部数はそれほど多くない。だが、独特なテイストのイラストで描かれたその表紙をみれば、誰もが一度は見たことがあるというだろう。そのくらいの知名度はある週刊誌だ。
そんな有名な媒体から何故私のような、新人文学賞を獲
第12話 友達がいません【下書き再生第二工場】
その日の朝もいつもと大して変わり映えのしない朝だと思っていた。いつもと同じ時間に起きていつもと同じ朝食をとり、いつもと同じ時間に家を出ていつもと同じ時間に出発する地下鉄に乗る。
そしていつもと同じように地下鉄の駅から地上に出たところに今朝はプラカードを持っている少年が立っていた。これだけはいつもとは違う光景だった。
ふーん、何この子。意味分かんない。
そう思っただけでお終い。プラカー