口腔(口のなか)の健康と全身の健康の関連性について
医学部と歯学部が分かれており、資格も医師資格と歯科医師資格で分かれていることなどの背景もあり、歯や口の中の健康と全身の健康が結びついていることはあまり一般に知られていない印象があります。
今回は、口の中の健康と全身の健康の関連性についてお伝えします。
歯周病と糖尿病
口の中の健康と全身の健康の関連性で一番有名なものは、歯周病と糖尿病の関係です。糖尿病の人は歯周病にかかっている人が多く、また逆に、歯周病になると糖尿病が悪化することがわかってきています。歯周病治療を行うことで糖尿病が改善します。
主な歯周病菌のポルフィロモナス・ジンジバリスの毒素が、炎症のある歯肉から血管内に侵入し、肝臓などに作用し血糖値に悪影響を及ぼします。また、早産や低出生体重児、肥満、動脈硬化、メタボリックシンドロームにも関与しています。歯周病による慢性炎症は、老化を促進するという報告もされています。
ストレスが口腔老化に及ぼす影響について
心理社会的ストレスがテロメアの短縮やエピジェネティッククロックを介して病的老化の促進に関与することが示されていますが、心理社会的ストレスは、口腔内の老化にも関連しています。
歯科心身症は、一般的には口腔内にさまざまな不定愁訴を訴えるものであり、心理社会的ストレスが症状の発症や増悪に関わっていると考えられています。
慢性的なストレスは、口腔内細菌叢にも影響することがわかってきています。腸内細菌叢は、多様性が高い方が健康に良いとされていますが、口腔内細菌叢も同様であると考えられています。腸内細菌叢においては、ストレスや老化で多様性の減少がみられることがわかっており、同様の傾向が口腔内細菌叢でもあると考えられています。
また、口腔細菌叢そのものが、腸内細菌にも影響することがわかってきており、またアルツハイマー病との関連も認められます。他の疾患などとの関連性も今後研究されていくことでしょう。
※出典:Anti-Aging medicine 2024 Feb.Vol.20 N0.1
口腔の健康と全身の健康のつながり、心理社会的ストレスによる口腔老化