【ネタバレあり】No.16 人を統べること
挿絵39巻より引用
さて、世はコロナ時代に突入し、最初の大きな波が引いている状況である。被害の全貌が徐々にみえてきており、医療システムだけでなく、経済や教育が受けた衝撃の余波が明らかになりつつある。
キングダムでも首都咸陽は幾度となく攻め込まれるが、何度も何度も復旧する。ひとは困難に対して適応し、日常を取り戻していく。
さて、今回は人を統べるということについて書いてみたい。
キングダムは単なる戦を描くバトル漫画ではない。
実は国というものや統治ということに関しても深く考えさせられる。
コミックス1巻から40巻までの434話もの間、他国との戦いの裏で、嬴政(えいせい)と呂不韋(りょふい)の戦いが物語として描かれている。
呂不韋は元商人であり、貨幣制度により人の統治は金で行えると主張するのに対し、嬴政は武力で天下を統一して、戦争のない国を作ることを主張し、真っ向からぶつかり合ってきたのだ。
挿絵はコミックス39巻より引用
結果として、嬴政が呂不韋の起こした大規模な内乱を制して勝利を収めるが、呂不韋の存在は非常に大きく、人を統べる上で経済の発展をかかげるのは武力で制圧するよりも確かに近代的な話に聞こえた。
そして武力で中華統一を掲げる嬴政に対して、各国の王や大将軍からもツッコミが入る。
挿絵は45巻より引用
滅ぼされる側の人間が快く秦国の住民にはなれるわけがないというのだ。
これに対して嬴政は、新しい国を作るのだと宣言し、最大の名台詞といってもよい言葉を発する。
挿絵は45巻より引用
つまり法で人を統べるというのである。
キングダムでは人を統べる可能性があるものとして『金』『武力』『法』が描かれている。
本題に入るが、私は新型コロナウイルスとの戦い(初戦)の一部始終をみて、漠然と感じたことがある。
命を助ける医療も、自粛を呼びかけることも、それらは国というものを守ることに繋がっていくのだろう。
この戦いはこれから第二波、第三波と続いていき、より長期の戦いを念頭に置いた戦略や戦術、兵站を練っていかねばならない。
その時、国を守るのは医療や介護だけではないのだ。
国を守るのは国民であり、国民を統べるのは、キングダムが示した法であり、経済でもあるはずである。
日本が国として発展し、このウイルスと共存していくためには、法律の整備も必要となるだろう。また、経済に関しても、医療機器や医療資材のサプライチェーンを見直していかねばならない。もちろん、自粛により破綻した経済も見直す必要がある。
私個人は医師として患者を助ける力をつけていくことも頑張りたいが、どうやらキングダムの武将のように馬に乗り相手を切るだけではいけないと思うのだ。
この国に生まれた者として、まだまだ力をつけるべき分野が多いことを感じている。
政治や経済をしり、法を学ぶこと。
そしてあるべき医療体制を模索してその一翼を担うこと。
国を守るために戦う天下の大将軍への道は始まったばかりだが、決して医学のみに捉われず、新型コロナウイルスと共存できる仕組みや国のあり方を俯瞰的にみれるようにならねばいけない。取り急ぎ、私は医師だが、物流(ロジスティクス/サプライチェーン)について学んでいる。
もちろん医師としても大きくならねばならない。まずは専門医試験を受ける準備をして、医学論文を書く。また研修医や看護師の教育にも取り組む。
自分らしさを見失わぬよう、人々と繋がりながら、毎日学んでは前に進み、戦があれば戦う。
つくづく自分はまだまだ100人将だなと思う。
ただ、時間はそんなにないのかもしれない。
Dr.RISHIN
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