カフェインは実際どれくらいとっていいものか

アスリートでもそうじゃなくても我々の生活に欠かせないカフェイン。今日はそのお話。

そもそもカフェインとは?


 簡単かつポップに説明すると超お手軽な精神刺激薬です。

カフェインは血液中から脳内に直接作用することができ、ヒトにおいては神経興奮作用、覚醒、解熱鎮痛、強心作用、利尿作用など多岐に渡る効果を示します。

...とまぁ難しい話に聞こえますが、原理は簡単です。カフェインのもつ覚醒作用の本質は、疲れを誤魔化しているだけなのです。

疲れのリボ払い

脳内でエネルギーを消費するとその代謝産物が蓄積されていきます。これら疲労物質は睡眠中に回収されていくものなので、疲労物質がたまってくるとセンサーが反応して、脳から眠れという司令が出てきます。我々が眠くなるのはこのタイミング、つまり疲労物質が脳内に蓄積された時です。

  しかしカフェインはこのセンサーのところに蓋をしてしまうので、センサーが働かず、脳は疲労を感知できないので眠くならないのです。

ここで大事なポイントは、カフェインは疲労物質の感知を妨害するだけであって、疲労物質の除去には関与していません。カフェインをとって元気になっても、それは疲れを感じない状態にしただけであって、疲労は抜けていません。

それゆえ、カフェインの効果が切れた段階でどっと疲労がでてきます。エナジードリンクはただの疲れのリボ払いです。あとで利子付きで返さないといけないのです。 毎朝コーヒーを飲まないと疲れて何も出来ない....という方はそもそも疲労が取れていません。まずは睡眠、休息について見直してみてください。  

競技パフォーマンスを向上する

カフェインが競技パフォーマンスを向上させることは昔から多くの研究で明らかにされています。それゆえにカフェインは2016年まで世界ドーピング防止機構(WADA)から禁止薬物として指定を受けていました。しかしカフェインは実際には数多くの自然食品にも配合されていることから2020年現在は禁止薬剤からは外されています。  

どれくらいを摂取すれば?

では、競技パフォーマンス向上のためにどれくらいの量を摂取すればいいのでしょうか。 古くから、体重あたり6mgのカフェインを1時間前に摂取すると良い、と言われていました。私の体重55kgで計算すると55×6=330mgを運動前にサプリメントで摂るということです。

しかし、最近の研究ではこれは量が多すぎるのではという懸念が出てきています。自転車競技などの長時間行うスポーツの場合、体重あたり1-3mg量のカフェインを継続して摂取すること(ただし200mgをトータル量で超えない)を勧める研究もあります。

さらには体重あたり1mgでも十分な効果を期待できるという研究も新たに出てきました。*2) 1mgで計算すると、私の体重だと55mg, コーヒーで言うとカップ半分、レッドブルの一番小さい缶で十分と言うことです。

さらに言うと、元の体質も無視できません。
カフェインは体内の酵素によって分解されて排泄されますが、この酵素の働きが遺伝的に弱い人が一定数います。カフェインに弱い自覚がある方はこの遺伝子を持っているかもしれません。こういったタイプの方には上記のカフェイン量は過剰量になってしまうのでお勧めできません。  

インターネットでは過剰摂取を煽っている

カフェインは気軽に摂取できるサプリメントとしてアスリートに広く普及しており、その容量に関して様々なウェブサイトで言及されていますが、いささか古い文献を参照にされているなと言う印象です。「400mgをとらないと!」と煽るものもありますが、最新の論文を読む限りでは、もっと少ない容量でもパフォーマンス向上は期待できると記されているため、無理して飲まなくても良いのではと個人的に考えます。

もちろん、コーヒーやエナジードリンクがお好きな方は嗜む程度に飲まれるのは一向に構いません。経口摂取ですと成人は400mgまでを1日の上限量として定めている物が多いです。(これも強いエビデンスがある量ではないのですが)コンビニで売っているモン◯スターエナジーはカフェイン量が多めなのでお気をつけて。  

まとめ

・カフェインはパフォーマンスを実際に上げる効果がある
・目安は体重あたり1-3mg/kg 
・コーヒー一杯からでも十分な効果は期待できる
・過剰摂取に注意する(200mg)を超えない
・合わない体質の人は無理して摂らない    
参照
1) Wake up and smell the coffee: caffeine supplementation and exercise performance-an umbrella review of 21 published meta-analyses. Grgic J, et al. J Sports Med. 2020;54(11):681

2) Nutritional and non-medication supplements permitted for performance enhancement, Burke L, et al. Clinical Sports Nutrition, 5th ed., McGraw-Hill, Australia 2015

3) Caffeine content of pre-workout supplements commonly used by Australian consumers. Desbrow B,et al. Drug Test Anal. 2019;11(3):523. Epub 2018 Oct 3.  

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