【小児科医が解説】子どもが“一人で生きていく”ために必要な能力〜Capacity to be alone/Winnicott〜
“ママ、一人で大丈夫だよ。”
子どもがこんなセリフを言ってくれたら、
そんな思いを抱えるお母さんは多いかもしれません。
日本は暗いニュースで溢れています。不登校数・自殺数、少子化が進んで子どもの数が減っているはずなのに、増加し続けています。
僕は小児科医で子どもの心の専門家ですが、それでもこのストレスが多く殺伐とした社会の中で、自分の子どもの心の健康が本当に保たれるのか・親として子どもの心を守ることができるのか、不安を感じているのが正直なところです。
歩くことさえ、ままならなかった子どもが、将来、一人でも生きていけるようになるためには、親としてどのような関わりをしていくことが必要なのでしょうか?
そのヒントになる考え方が、小児科医で児童精神科医でもあるドナルド・ウィニコット先生の<Capacity to be alone:一人でいられる能力>です。
この能力は、子どもが親から自立し、自分自身で生きていく力をつけるための基盤となるものです。
ぜひ、このコラムを読んで、子育てについて考えていただけたらと思います。
<一人でいられる能力>の重要性
ドナルド・ウィニコットが提唱した<一人でいられる能力>は、子どもが自立して自分自身で物事を考え、行動する土台となります。
子どもが親から離れて外の世界に飛び出しても、安心して自分で生きていく力を身につけることができれば、その子どもの可能性・選択肢は確実に広がります。
なぜこの“一人でいられる能力”がそんなに重要なのでしょうか。
それは、この“一人でいられる能力”があれば、子ども自身が一人でいることに不安を感じることがありませんし、この安心感があれば、新しい環境に自ら挑戦することができるからです。
<一人でいられる能力>はどのように育まれるのか
この能力は、母親(または主要な養育者)との安全な関係の中で培われます。
安全なアタッチメント:
まず、子どもが一人でいられるようになる前の段階として、子どもが物理的にも心理的にも守られる関係の中で、母親に安心を感じられること、が必要になります。
親が近くにいて危険を回避することができ、“親がいる”という安心できる環境があれば、子どもは物理的・心理的に守られているので、自由に自分の意思や興味に従って独立した行動をとることができます(もっと簡単な言い方をすると、子どもが好き勝手に動ける、ということです)。
失敗したとしても、近くにいる親に慰めてもらえることができますし、取り返しのつかない失敗は親がいることで避けられるのです。適度な距離:
子どもを守らなければいけない、と言っても母親が子どものそばにいつもいるわけではありません。
親は“無理矢理にではなく”離れていなければいけないのです。
“無理矢理にではなく”というのはどういうことかというと、子どもが不安を感じたらいつでも親にくっつける距離にはいる、ということです。
子どもがまだ赤ちゃんなら、親子の間にほとんど距離はないかもしれません。子どもが歩けるようになれば常にくっついていてはいけないけど、子どもが自分で歩いて親に飛び付ける場所にいなければならないのです。
この“離れているけど、離れすぎていない”距離感が、子どもに不安ではない“一人で過ごす時間“を経験させ、子どもが一人になる能力を育てるのです。遊べること:
子どもが一人になった時、何もすることがなければ、子どもは不安になり親を探し求めて、親から離れられなくなってしまいます。
一人でいる時間を楽しく過ごせるようにするには、一人でも遊べるようになっていることが必要で、一人でも遊べるようになるためには、その前に親と一緒に遊んだ体験が必要になるのです。
つまり、子どもが一人でいられるようになるには、その前に親と一緒に遊んだ体験が必要になるのです。母親を見て不安にならないこと:
子どもが母親から離れるためには、母親が安定していることが必要です。母親が不安を感じていて不安そうな表情をしていることを感じれば、子どもも不安を感じ、親から離れられなくなります。
子どもが安心するためには、親が安心している必要がある、ということなのです。
母親が安心・安定しているためには、母親自身が自分の時間を大切にできていることが必要になります。そして、それ以上に重要なのは、母親が不安を感じた時に“いつでも”相談できる状況にある・母親が守られる状況にある、ということです。
子どもが一人でいられるようになるには、母親が守られていて孤立していない、ということが必要なのです。父親がいること・父親が子どもと母親を守ること:
母親が守られていること・孤立していないことが子どもが一人になるために必要だ、という話をしましたが、この、母親を守る役割・母親を孤立させない役割が父親の役割です。(父親がいない場合には祖父母や社会の大人がこの役割を果たすことになるのだと思います。)
そして、もちろん、父親が子どもに直接関わることも。
父親が子どもに直接関わることで、母親は子どもと離れられますし、子どもも母親から離れられるのです。
つまり、子どもの立場からすれば、母親と離れてはいるけど、一人ではない時間が生まれるわけですし、母親の立場からすれば、子どもと離れてはいるけど、子どもを一人にしていない時間が生まれるわけです。
この子どもが一人になる・子どもを一人にさせる段階の前段階が重要で、この段階を作ることが父親の役割なのです。
ここまでの文章は、具体的な子どもに対する関わり方を書いているわけではありません。しかし、この<一人でいられる能力>は、子どもが親から自立して自分の人生を歩むために不可欠です。
この不安で先行きの見えない時代だからこそ、子どもが未来に向かって確かな一歩を踏み出せるように援助したいところです。
少しでも参考になれば幸いです。
ではまた明日、
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ここまで読んでくださってありがとうございました.
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