病院で行われる医学生・研修医に対する教育
この文章は
・医学生, 研修医
・病院で指導を行う医師
・お医者さんに対して行われる教育に興味がある方
向けです。
僕は、こんなTweetをしました。
このコラムでは、なぜ僕がこのTweetをしたのか、説明できればと思います。
2023年8月、研修医を終えたばかりの医師3年目の26歳の男性が、
過労の末、自殺に追い込まれる、というニュースがありました。
ショッキングなニュースであるとともに、多くの医療関係者が
「これは十分、あり得ることだ」と感じていたのも事実だと思います。
それくらい、若手医師が抱える仕事量・負担が多くなっている現状があります。
大学病院で、医学生・研修医・若手医師に対して指導する立場からすると、
若手医師や医学生の仕事量が増え、酷使される状況は、
絶対にあってはいけない・避けなければいけないことです。
ただ一方で同時に、少なくとも僕が勤務する大学病院では“逆のこと”、
すなわち、あまりにも暇をしている医学生・研修医が多くなっている現状があるのも事実です。
現在の新医師臨床研修制度では、医学部を卒業後は2年間かけて、全ての診療科を研修するような仕組みになっています。(2004年より)
医師としての基礎を作る大事な時期に全ての診療科・その診療科における考え方を学び経験することで、卒後3年目以降に特定の診療科に進んだとしても、総合医として最低限の対応をどんな患者さんであってもできるようにする。
こんな理想が掲げられて作られたシステムです。
実際、このシステムに乗って、総合医としてのスキルを持った上で、専門家になる医師も増えていると思いますし、
研修医として一度、全ての診療科を経験していることで自分が所属していない診療科の事情についても理解しやすくなる、そんなメリットもあるように思います。
ただ、全てのコインに表と裏があるように、
このシステムにも大きな問題があるように思います。
研修医の立場からすると、自分の将来に関係ない(と感じてしまう)診療科ではモチベーションを保つことが難しくなりますし、
指導を行う立場からしても、せっかく教えても、自分の科に入ってくれるわけではないため、教えてても意味がない(と感じてしまう)研修医が発生してしまうわけです。
加えて、研修医も指導医も
毎回、新しい科を回る毎に、新しい研修医が回ってくる毎に、説明を受ける/行うということを繰り返さなければならないのです。
これは忙しい医療現場ではかなり非効率的です。
研修医も指導医もお互い疲弊しますし、
受けている/提供している教育に意味を見出せなくなるのです。
結果として起こるのは悪循環です。
・指導医のやる気がない→研修医のやる気もなくなる。
・研修医のやる気がない→指導医の意欲もなくなる。
こんな状況で起きたのがCovid-19の流行、
そして緊急事態宣言下での研修医による飲み会です。
(※実際には研修医だけではなく、医師によるものも多かったです。)
僕はこの時、既に大学で働いていましたが、患者さんの研修医の先生方に対する嫌悪感はかなり強かったです。
小児科医として働いていましたが、子どもを入院させている親御さんから
「研修医の先生は担当させないでください。」
そうはっきり言われるような状況でしたし、僕たちは何の反論もできませんでした。
飲み会に参加しているかどうかは関係なく、“研修医”というレッテルだけで、
診療から外されたのです。
これで、さらに研修医の臨床離れ・患者さん離れが進んだように思います。
気持ちはよくわかります。
せっかく医師として働ける、そう思ったのに、何もすることはなく、
ただただ研修医室にいるしかないのですから。
そして冒頭に述べた、Tweet・若手医師の過労死問題です。
実際、僕の勤務する病院でも、かなり厳格に研修医の先生方に対して過酷な労働を強いることな内容に管理部門から言われています。
(逆に専門を決めた後期研修医・専攻医の負担が増えやすい現状があり、彼らを守る必要がありますし、後期研修医・専攻医を守れば、その上の世代が過酷な勤務を引き受けることになります。)
指導医とすれば、若手医師に負担をかけることは、後でパワハラと言われないためにも絶対避けたいと思っています。
なので、教育を提供すれば、個人的な思い上がりではなく、研修医の先生にも良い体験になることが分かっていたとしても、それ以上誘うことはないのです。
(僕は医学教育を学んでいますし、自分が真面目に勉強していた医学生ではないので、いわゆる「背中を見て何か感じろ・見ていれば分かるだろう」的な教育は行なっていません。)
指導を行う僕の中に、丁寧に説得する意欲はありませんし、
正直、断れるなら自分のために自分の時間を使おう、そう思うばかりです。
研修医の先生の側も、指導医にしつこくされなくて済んでLuckyですし、自分の発表に専念できます。
つまり教育を行わない方がWin-Winに見えるわけです。
でも、多分、間違ってます。
だからこそ、研修医の先生ではなく、自分に思うのです、
教育の提供を断られた僕は、どうすべきだったのだろう、と。
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ここまで読んでくださってありがとうございました.
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