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40代・50代必見!男性更年期障害に効く漢方4選【泌尿器科専門医が解説】

こんにちは!
泌尿器科専門医・産業医のDr.koromoです。


男性更年期障害(LOH症候群)の症状は、加齢に伴うテストステロン(男性ホルモン)の低下によって、疲労感や気力の減退、性欲の低下、イライラ、集中力の低下など多岐にわたります。

西洋医学的にはテストステロン補充療法(TRT)が選択肢になりますが、ホルモン補充に抵抗がある方や副作用リスクを考慮して、まずは漢方薬を試してみたいという声も多く耳にします。

私自身、泌尿器科専門医・指導医として西洋医学の立場から診療を行いつつ、産業医・テストステロン治療認定医として多くの働き盛り世代の健康相談を受ける中で、「漢方に興味はあるけどどんなものがあるの?」という質問をたびたびいただきます。

この記事では、男性更年期障害の症状に用いられることがある代表的な漢方薬4種類について、その特徴や効果が期待される症状、注意点などを解説していきます。

あくまでも漢方薬は医薬品ですが、個々人の体質や症状に合わせて処方されるため、最終的には漢方に詳しい医師や薬剤師に相談いただくのが望ましい点も併せてご承知ください。


目次

  1. 漢方による男性更年期障害アプローチの考え方

  2. 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

  3. 桂枝茯苓丸(けいしぶくりゅうがん)

  4. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

  5. 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

  6. 漢方の選び方と注意点

  7. まとめ


1. 漢方による男性更年期障害アプローチの考え方

1-1. 西洋医学と漢方医学の見方の違い

西洋医学では、男性更年期障害(LOH症候群)の主因をテストステロンの低下ととらえ、補充療法やサプリメント、生活習慣の改善などで対処します。

一方、漢方医学では、全身の「気・血・水(き・けつ・すい)」や臓腑のバランスの乱れからくるエネルギー不足や熱の偏りを調整し、身体全体の調和を取り戻すアプローチを行います。

1-2. 漢方の特徴

漢方では、「○○証(しょう)」といった形で患者さんの体質や症状のパターンを捉え、個々人に合った処方を選びます。

男性更年期障害の場合、気虚(ききょ:エネルギー不足)血瘀(けつお:血の滞り)、**肝気鬱結(かんきうっけつ:ストレスによる気の滞り)**などが絡むケースが多いと言われます。これらの状態を整えることで、イライラや疲労感などの症状を緩和する狙いがあります。


2. 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

2-1. 概要

柴胡加竜骨牡蛎湯は、「柴胡剤(さいこざい)」と呼ばれる漢方の一群に分類されます。

主成分として柴胡(さいこ)を含み、さらに精神を安定させるとされる竜骨(りゅうこつ)・牡蛎(ぼれい)が加えられています。

古くから神経症状やストレスの強い方に使われることで有名です。

2-2. 効果が期待される症状

  • イライラ・不安感
    心身が昂ぶりやすく、ストレスを強く感じる方に用いられます。男性更年期で起きやすいイライラ、不安定な気分、動悸などに効果が期待されます。

  • 神経性の動悸、のぼせ、肩こり
    自律神経の乱れによる症状にも適しています。男性更年期特有のほてり感やのぼせ感にも応用されることがあります。

2-3. 注意点

柴胡加竜骨牡蛎湯は比較的幅広いタイプの人に使われますが、胃腸が極端に弱い人や乾燥が強い人には合わない可能性があります。

また、イライラやストレス症状が主体の方には適しやすい一方、強い冷えや「陰虚(いんきょ)」がある方には別の処方が選択されるかもしれません。


3. 桂枝茯苓丸(けいしぶくりゅうがん)

3-1. 概要

桂枝茯苓丸は、女性の冷え性や生理痛などに使われる印象が強い漢方薬ですが、実は男性にも応用されるケースがあります。

**「血瘀(けつお:血流の滞り)」**を改善する作用があるとされ、のぼせ、肩こり、頭痛、イライラなど「熱が上にこもる症状」がある方に処方されることがあります。

3-2. 効果が期待される症状

  • 血行不良やのぼせ
    血行を良くし、上半身ののぼせや肩こり、頭重感などを改善。男性更年期の自律神経乱れで生じるほてりや火照りにも適するケースあり。

  • 軽度の精神不安定、イライラ
    血行不良からくる神経症状を和らげるとも言われ、穏やかな気分安定効果が期待される場合があります。

3-3. 注意点

桂枝茯苓丸は「実証(体力がしっかりある)」~「中間証」寄りの方に処方されやすいとされます。疲労困憊で冷え症が強い人や、著しく体力が落ちている人には逆効果になる可能性があるため、判断は専門家に委ねましょう。


4. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

4-1. 概要

補中益気湯は、体力や気力が落ちている方への処方として有名で、非常にポピュラーな漢方薬の一つです。消化吸収を助け、疲れを取りやすくすることで「気力(エネルギー)」を補う目的で使われます。

男性更年期障害で「とにかく疲れが抜けない」「食欲が落ちている」など、明らかなエネルギー不足が感じられる場合に適する可能性があります。

4-2. 効果が期待される症状

  • 慢性的な疲労感・倦怠感
    全身のエネルギーを高める処方として、いわゆる「やる気が出ない」「すぐ疲れる」といった症状に。

  • 食欲不振、胃腸の弱り
    胃腸機能のサポート効果も期待できるため、食欲が落ちてさらに体力が落ちている方のフォローに。

4-3. 注意点

補中益気湯はどちらかというと「虚証(ひょしょう:体力不足)」向きの処方です。血行不良やストレス症状が強い場合には物足りないこともあり、イライラやほてりが主症状の男性更年期には他の漢方薬と併用、あるいは別の処方が選ばれるケースが多いです。

また、体質によっては胃がムカムカしたり、のぼせ感が強くなる可能性もあるため注意が必要です。


5. 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

5-1. 概要

牛車腎気丸は、腎陽虚(じんようきょ:腎の機能が弱り体を温める力が足りない状態)に用いられる代表的な漢方です。もともとは慢性的な腰痛、しびれ、下半身の冷え、排尿困難などの症状に処方されてきました。

男性更年期障害では、特に冷え、腰痛、頻尿、性機能の低下などが目立つ場合に検討されることがあります。

5-2. 効果が期待される症状

  • 下半身の冷え、腰痛、頻尿
    腎を温め、下半身の血行を良くすることで、腰痛や足の冷え、夜間頻尿などの改善が期待できる。

  • 軽度のED(勃起機能低下)のサポート
    体を温め、エネルギーを補うことで性機能面にもプラスになる可能性があります。

5-3. 注意点

牛車腎気丸はやや体を温める作用が強いため、のぼせやほてりが強いタイプの男性更年期には向かない場合があります。また、しびれやむくみなど腎機能が大きく落ちているときにも慎重に使用されます。

糖尿病の末梢神経障害などにも使われる一方、体質に合わないと副作用が起きることもあるため、専門家の判断が重要です。


6. 漢方の選び方と注意点

6-1. 証(しょう)の把握

漢方薬の選択は「病名」だけではなく、「その人の体質(証)」を見極める必要があります。

例えば同じ男性更年期障害の症状でも、主にイライラ・不眠・のぼせが強い場合と、疲労感・食欲不振・体力低下が主症状の場合では、処方される漢方薬が異なる場合が多いです。

6-2. 医師・薬剤師への相談

市販の漢方薬も多数出回っていますが、自己判断で選択すると不十分な効果にとどまったり、副作用(のぼせ、胃腸障害など)が出やすくなることもあります。できれば漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

6-3. 西洋薬との併用

すでにテストステロン補充療法(TRT)を行っている方や、ほかの西洋薬(抗うつ薬や降圧薬など)を服用中の場合、漢方薬との相互作用が起こる可能性もゼロではありません。併用する場合は、必ず担当医に報告しましょう。

6-4. 効果が出るまでの期間

漢方薬は「すぐに効果が出る」ものではなく、数週間~数か月かけて徐々に身体のバランスを整えることを目的としています。途中で諦めず、決められた服用期間や用量を守って続けることが重要です。


7. まとめ

男性更年期障害(LOH症候群)の治療としては、西洋医学的なホルモン補充(テストステロン補充療法)がよく知られていますが、漢方薬も症状緩和の有力な選択肢になり得ます。

特に、軽度~中等度の症状や、ホルモン補充に抵抗がある方、または補充療法との併用を希望する方にとって、次の漢方薬が候補となることがあります。

  1. 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

    • ストレスやイライラが強いタイプに向く

  2. 桂枝茯苓丸(けいしぶくりゅうがん)

    • 血流の滞りやのぼせ、イライラなどがある場合に適する

  3. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

    • エネルギー不足、倦怠感が顕著な「疲れやすいタイプ」に効果的

  4. 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

    • 腰痛、冷え、頻尿、性機能低下など下半身の弱りが中心の場合に検討

ただし、漢方薬は「誰が飲んでも効く」わけではなく、患者さんの「証(しょう)」を正確に見極めることが大切です。体力があるかどうか、熱っぽいのか冷えが強いのか、どの部位に症状が出ているのかなどを総合的に判断して処方が決まります。

また、他の持病や服用中の薬によっては合わない場合もあるので、できれば漢方に詳しい医師や薬剤師の助言を得ることをおすすめします。

男性更年期障害の症状でお悩みの方は、まずは専門医に相談し、テストステロン値などを測定したうえで、ホルモン補充や漢方、生活習慣改善などを含めた総合的な対策を検討してみてください。

漢方薬は西洋薬とは異なる視点で「全身のバランスを整える」アプローチが期待できるため、テストステロン補充が難しい方や副作用が心配な方にとっても有益な選択肢になり得るはずです。

働き盛りの世代が、心身ともに元気を保ち、充実した日々を過ごすためのサポートとして、今回は漢方薬4選をご紹介しました。

無理なく・適切に体質改善を図ることで、男性更年期障害の症状が緩和し、より豊かな生活を送れることを願っています。

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