有効な食中毒対策とは?
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
関東も梅雨入りし、気温も湿度も高い時期になって来ました。水不足にならない様に、そして植物が良く育つ為には、恵みの雨は必要なのですが、高温多湿環境は、雑菌やカビ(真菌)が増殖しやすい環境でもあります。
その為に、環境表面を界面活性剤水溶液や適切な濃度の次亜塩素酸水溶液で清拭したり、アルコール除菌剤を使ったり、と言うことをしてる人も多いと思います。
【食材や料理に除菌スプレー?】
成分は食品添加物のみという事で、直接食品にかけても良い、とも謳われている「パストリーゼ」という消毒液スプレーがありますが、本当に料理に直接振りかけて大丈夫ですか?と言う質問がSNSにありました。
速やかに中毒症状が出る訳では無く、常識の範囲内の利用であれば、健康被害を起こすリスクもかなり低い、と言う意味では、直接振りかけても安全なのでしょうが、食材や料理に直接振りかける利用法が推奨されている訳では無いんですよね。
食器、容器、テーブル、調理器具などの表面の消毒処理に使い、万が一残留物が口に入ったとしても毒性の心配はありませんよ、と言う程度だと考えておいた方が良いと思います。
それよりも、食中毒がなぜ起こるのか。食中毒を引き起こす雑菌はどう言う時に増えるのか。と言うことを知っておくと、この様な消毒剤を直接振りかけなくても、食中毒を起こしにくい様な対策は可能です。
【食中毒の原因とは?】
食中毒の原因となる主なものは、細菌、カビ(真菌)、ウイルス、寄生虫、自然毒などの化学物質などです。
細菌や真菌などは、温度や湿度などの条件が適切になると食べ物の中で増殖し、その食べ物を食べることにより食中毒を引き起こします。
ウイルスは、細菌のように食べ物の中では増殖しませんが、食べ物を通じて体内に入ると、人の腸管内で増殖して食中毒を引き起こします。また、ウイルスは低温や乾燥した環境中で比較的長く生存できるので、感染経路の特定が難しいこともあります。
寄生虫は、魚や肉の材料となる鳥獣の内臓に住み着いていることが多く、殺処分した後に鮮度が落ちると、筋肉など可食部に移行することで感染を引き起こすことが多いです。
その他には、肝臓や筋肉、脳の中に卵や幼虫の形でいる物を食べることで、腸管内で孵化して成長し、予想外の部位に移行して様々な症状を引き起こすことがあります。飼育や養殖されている食材ではほとんど無いですが、野生の鳥獣魚類を食べる際には、注意が必要です。
自然毒は、フグやキノコ、ジャガイモの芽などの食べ物の特定の部位に含まれており、その物自体を食べないか、適切な知識と技術で有毒部位を除去したり、無毒化処置をして調理する必要があります。
【雑菌増殖に重要なのは「温度」】
雑菌の増殖に最も適した温度は、菌の種類にもよりますが、大きく分けると、低温菌(12-18℃、0℃で増殖可能な菌も存在します)、中温菌(30-40℃)、高温菌(55-65℃、一部の菌は95℃でも生存可能)の3群に大別されます。
調理した料理は、室温でゆっくりと冷ますことで、これらの最適な温度帯を長くすることになり、食中毒リスクが高くなります。
調理後は一旦平らにして熱を逃がしやすくしたり、皿の下に氷や保冷剤を敷いたりして、可能な範囲で急冷することで、上記の最適な温度帯にある時間を短くすることで、雑菌に繁殖の時間を与えない様にすると、有効な食中毒対策になります。
加熱調理の際に雑菌を完全に死滅させるには、少なくとも75℃以上で1分以上(ノロウイルスの場合85-90℃で90秒以上)の加熱が必要だと言われています。
健康意識の高い人達の中には、食材に含まれる酵素と呼ばれる蛋白質を変性させずに摂取することを目的にして、生の食材か、48度以下の低音で調理された食材を食べる「ローフード」などと呼ばれる食事法を実践されていることがありますが、調理過程で雑菌が増殖する温度帯におきながら死滅させる温度帯にはしないので、食品安全的にはリスクが高い食事法だと言えます。
【お弁当や料理を保存する際の工夫】
新鮮かつ信頼出来る食材については、生食や低温調理でもすぐに食べれば基本的には問題ありません。お酢や梅干し、ワサビやワサビシート等を活用することで、雑菌が繁殖しにくい環境にすることも出来ます。
加えて、すぐに食べない分の料理は、前述の様にすぐに冷まして冷蔵庫或いは冷凍庫の中で保管し、なるべく早く食べ切る様にするのが、当たり前ですが確実です。
【除菌グッズを使わなくても衛生管理は出来る】
ちなみにですが、新型コロナウイルスのパンデミックが起きてから、「アルコール除菌」「次亜塩素酸」やその他の殺菌成分の入った除菌グッズが多用される傾向にありますが、界面活性剤は、アルコール製剤が有効なエンベロープウイルスにも有効ですし、次亜塩素酸しか有効では無い非エンベロープウイルスも、物理的に拭き取ったり洗い流すことで、発症に必要な量より減らすことは十分に可能だったりします。
もちろん除菌グッズを適切に使うことで、感染対策をより確実にすることはできますが、環境表面を清潔な手拭いやおしぼりこまめに拭く、と言うのはかなり有効な対策です。
真菌(カビ)の場合、湿度60%以上で増殖の勢いが高まるので、一日に何度か窓を開けて換気をする、エアコンの除湿機能やを除湿剤を使用して、室内の湿度を60%未満にすることが有効ですが、逆に湿度が40%未満になると、飛沫やエアロゾル(マイクロ飛沫)が浮遊しやすくなるとともに眼、鼻、喉などの粘膜が乾燥気味になり、感染症にかかりやすくなりますので、注意しましょう。
現代では優れた保存料を使うことで、雑菌や真菌が繁殖しにくい加工食品が一般的なのですが、全く添加物を使わないパンなどは、梅雨から夏にかけて室内に放置しておくと、1-2日でカビが生えて来る、ということを知らない人も意外と多かったりします。
減塩や無添加を意識する人達は特に、すぐに食べない料理の温度管理や保存方法について意識することで、余計な除菌製剤を使わずに食中毒対策をすることが可能ですので、参考にして頂けたら幸いです。
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