The Australian Jazz Quintet – Three Penny Opera (1958)
アルバム『Free Style』と対をなすようにして発表された『Three Penny Opera』は、Kurt Weill作曲の『三文オペラ』をジャズにアレンジした冒険的な一枚で、両LPに共通しているのはいずれも編曲家としてTeddy Charlesが多大な貢献をもたらしていることである。The Australian Jazz Quintetはベツレヘム・レーベルに数多く作品を残してきただけに、意欲作も多い。中でもこのアルバムは20世紀を代表する古典への挑戦であると同時に、The Modern Jazz Quartet風のアプローチへの対抗とも受け取れそうだ。
オペラ作品とはいえ、実は本作は現代のジャズ・ファンの耳になじみきったピカレスクの名曲で始まる。1曲目の「Mack The Knife」は、Louis Armstrongが1955年に英語詞で歌って以来ジャズの有名なスタンダードになったが、当時としてはまだまだホットなナンバーを採り上げたという感覚に近いだろう。
本作の制作にさしかかった時、Charlesは原曲の圧倒的なイメージに呑まれないよう、あえてオリジナルの舞台を鑑賞することは避けた。だが、LPとオリジナルをていねいに聴き比べれば、Charlesの仕事の大胆さと繊細さに驚かされることだろう。アレンジは機知に富んでいて、「Army Song」のように原曲の雰囲気を残したものもあれば、「Solomon's Song」のように粋なハードバップに生まれ変わっているナンバーもある。見事なのはラストの「Finale」で、Jack Brokenshaのヴァイブが活きたアンサンブルが展開し、ジャズならではのしびれるようなテーマで大団円を迎える。このえも言われぬクールさ。
おしむらくは、このアルバムは未だに正式な形で再発されていない。嘆かわしいの一言である。