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Luther Allison – Love Me Mama (1969)

 前年に出たMagic Samの『West Side Soul』と同じように、Luther Allisonのソロ・キャリアのスタートを飾った『Love Me Mama』は、60年代がシカゴ・ブルースが全く新しいサウンドに生まれ変わった時代だったことを証明するアルバムだ。ベースのRobert "Big Mojo" Elem、サイド・ギターのJimmy Dawkinsといったメンバーは、彼らだけでも十分主役級のプレイヤーだった。完成した作品には処女作らしい勢いがあり、同時にサイドマン時代から練り上げられてきた情熱的なギター・フレーズの数々がちりばめられている。
 タイトなリズムとソウル感に溢れたボーカルからなるオリジナル「Why I Love The Blues」は、Allisonの敬愛するB.B. Kingへのオマージュのように聴こえてくる。そして「Dust My Broom」も彼のフェイバリットだったRobert Johnsonのナンバーだが、今回に限ってはMagic Samが同様にJohnsonの曲を再解釈した「Sweet Home Chicago」と聴き比べるのが良いだろう。ロックやソウルの影響をブルースに逆輸入したこの刺激的なサウンドは、戦前のクラシック作品に新たな命が吹き込まれる瞬間を捉えている。
 あえて地味目なアレンジでAllisonのボーカルを際立たせた「The Sky Is Crying」、Bobby Davisのツボを押さえたドラムが印象的なファンキー・ブルースの「Help Me」など、スタンダード中心ながらもサウンドの構成には隙というものが全く無い。
 同年のアン・アーバー・ブルース・フェスティバルのステージでも好評をさらっていたAllisonは、後にW.C. Handy音楽賞の受賞など、第一級のブルースマンへと飛躍していく。そして本作には、それを予感させる大いなるエネルギーがうず巻いている。