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John Entwistle – Smash Your Head Against The Wall (1971)

 それまでThe Whoの隠れた名ソングライターとして、いくつかのアルバムに曲を提供してきていたベーシストのJohn Entwistleは、アルバム『Who's Next』に先駆ける形でソロ作品を発表した。バンドの中では静かなたたずまいとそれに反比例するような強烈なテクニックで存在感を示していた彼だが、本作では宗教や生と死の神秘を歌う詩人と化している。
 やはり注目すべきは、それまでのハード・ロックのイメージを覆す「Heaven And Hell」のアレンジで、暗いホーンやピアノ(Entwistle自身による)などに彩られている。レントゲン写真をオーバーレイした意味深で不気味なアートワークはこの作風にぴったりだ。
 とはいえ、Leslie Westを思わせるヘヴィなリフの「My Size」や、Keith Moonがパーカッションで参加した「No. 29 (External Youth)」のような激しいナンバーが、〈The Whoの派生作品〉へ否応なく寄せられる期待に見事に応えてみせる。ギタリストDavid Langstonは大胆さと繊細さを併せもった素晴らしいミュージシャンで、「I Believe In Everything」ではEntwistleとデュエットするようにコーラスを絡めている。また、Neil Youngの「Cinnamon Girl」はオリジナルのギター・アンサンブルにも負けない重厚さがある名カバーだが、この曲はオリジナルのリリースでは収録されていなかった。
 内容は文句のつけようが無かったもののセールス面では不振に終わった『Smash Your Head Against The Wall』は、Entwistleのその後の創作意欲に火を付けた。彼はバンド活動と並行してコンスタントに作品を発表し続けたが、本作の輝きはやはり抜きんでている。