Lonnie Johnson – Tomorrow Night (1970)
戦後、キング・レーベルに吹き込んだ「Tomorrow Night」のヒットによって、Lonnie Johnsonはドラムやコーラスを擁したモダンなソウル・サウンドもものにできるシンガーとしてのキャリアを得た。伝統的なギターと粋なピアノを伴った穏やかなブルースに、彼の得意とした巧みな歌詞のアレンジも加わったおかげで、キング録音をまとめたこのLPはまさに一人のブルースマンの円熟の極致を示している。
R&Bチャートの1位を7週にわたって独占した「Tomorrow Night」は、戦前のヒット曲をブルースの定番曲としてイメージづけた決定的な名演だ。B.B. Kingをはじめとしたあらゆるカバーが生まれたが、その多くがピアノの悲しげなサウンドを伴っているのは、本作のバージョンによるところが大きいといえるだろう。Johnsonは60年代にコペンハーゲンでOtis Spannと再録しているがそちらも必聴だ。
「Careless Love」も有名曲だが、これがリスナーの心に特に強く残るのは、ラストに〈この愛に銃を4,5発ブチこんで殺してやるさ〉という内容のなんとも物騒なヴァースが加えられているからだ。Johnsonはたびたびブルースや愛そのものを擬人化するトガッた詩人でもあり、この歌詞はその典型である。技巧派でならした彼のギター独演で歌われる「Backwater Blues」も心にしみてくる上に、なんともいやらしい「Jelly Roll Baker」は、伝統的で妥協のないホウカム・ソングで、懐かしの戦前ブルースの雰囲気を思い出さずにはいられない。
Johnsonはキングのシングルで、次代への扉を開いた。ここから彼の大御所ブルース・シンガーとしての第二のキャリアが始まる。