Rosa Lee Hill – Rosa Lee Hill (2008)
George Mitchellによるフィールド録音をアルバム・シリーズとしてよみがえらせることは、90年代ブルース・リバイバル運動の旗手だったファット・ポッサム・レーベルにとっては悲願そのものであった。その一環で製作されたRosa Lee Hillのアルバムにはたった4曲の録音しか入っていないが、彼女が人生で味わってきたブルースが濃密に反映されているようだ。彼女の父親Sid Hemphillはフィドル奏者として知られ、Alan Lomaxのアーカイブにも録音が残っており、また女性ギタリストの最高峰だったJessie Mae Hemphillのおばにも当たる、まさにブルース一族の人間と言える。
全てトラディショナル・ソングを基にしたブルースで、似たヴァースを繰り返しながら少しずつ変化させるヒルカントリーの典型的なスタイルだ。もちろん余計な伴奏は一切排されている。ブルース・ファンに最も耳なじみがあるであろう「Roll & Tumble」もHill独自のグルーヴの中で料理されているため、恐らく聴いたこともない歌のように感じられるに違いない。
いずれも晩年である67年に録音されたもので、59年のLomax録音よりも声の張りやギターのプレイに衰えがみられるが、それもまたブルースの真実だ。4曲のプリミティブなブルースを残してまもなく、Hillは68年に58歳でこの世を去った。