King Curtis – Live At Fillmore West (1971)
Aretha Franklinの1971年のフィルモア公演はRay Charlesの参加によって大いに語り草になったが、ヒッピーの聖地におけるこのライブは、巨視的に見てもロックとR&Bが熱い邂逅を果たした象徴ともいうべき記録である。そんな彼女の伝説と同じ夜に生まれていた、もう一枚の『Live At Fillmore West』が本作だ。
Franklinの前座とバック・バンドを務めた"King Curtis" Ousleyは、Bernard PurdieやJerry Jemmottを擁する鉄壁のメンバーを率いてステージに上がった。今になってみればとんでもなく豪華なメンツではあるものの、当時のフィルモアの観客たちにOusleyの名がどこまで浸透していたかは議論の余地がある。アルバム『King Size Soul』に収録されていたProcol HarumやBobbie Gentryのヒット・ナンバーが並んでいるのは、ソウルの大御所がロック・キッズたちに2歩も3歩も歩み寄った結果でもあった。
メンバー紹介とともに演奏が高まっていく「Memphis Soul Stew」と、完璧なOusleyのサックスが紡ぐ優しいバラード「Soul Serenade」には、メンフィス産ソウルの燃えるグルーヴと涙が出そうな繊細さが対照的に映し出されている。ハイライトの一つとなった「Whole Lotta Love」は、Cornell Dupreeのギラギラしたギターのおかげで、アシッド・ファンクのような仕上がりとなった。
3日にわたるライブが終わった後、不十分だったThe Memphis HornsのパートをNYにて録音しなおす作業を要した。しかしそのおかげもあって『Live At Fillmore West』のきらめきに満ちたサウンドは熱狂をもって幅広い層に受け入れられた。Ousley自身は発売と同時期に不慮の死を遂げてしまったのだが、ジャンルと人種の壁をたやすく打ち壊したこのレコードは、ビルボードのアルバム・トップ100に食い込んでいる。