Cream – Wheels Of Fire (1968)
Creamは実験的なスタジオ・ワークとライブにおける濃密なインプロヴァイゼーションで、ロックファンだけでなくエレクトリック・ジャズや保守的なブルースの愛好家たちをも論争に巻き込んでいた。今思えば意外なことだが、彼らがアメリカの聴衆に受け入れられるまでは長い時間がかかっており、『Fresh Cream』は精力的なツアーを重ねたうえでもUSチャートの39位にとどまっている。
68年の『Wheels Of Fire』が歴史的に最も重要な2枚組アルバムであることは疑いようがない。あらゆる意味でバンドの持ち味が最大限に詰め込まれており、スタンダード・ブルースをヘヴィに仕上げた「Born Under A Bad Sign」や「Sitting On Top Of The World」はハード・ロックの産声だ。そして「As You Said」はZepのキャリアで言えば『III』にあたる美しいアコースティック・ナンバーである。
Creamのもう一人のメンバーである詩人Pete Brownの傑作も収録されている。「White Room」は、元々8ページあった詩を1ページにまで圧縮したシュールな世界観が、怒涛の演奏とJack Bruceの魅惑的な歌声で増幅された名曲だ。ライブでもここぞという場面で演奏される。
2枚目はサンフランシスコにおける白熱のライブ音源で構成されているが、選曲とスタイルは非常に挑戦的といえる。「Spoonful」をはじめとした初期からのレパートリーは長尺なプレイに変貌し、特にGinger Bakerのドラム・ソロで構成される「Toad」は、熱狂と快哉が入り乱れる比類なき16分間である。古典を下敷きにした「Crossroads」は、かつてEric ClaptonがThe Powerhouse名義でひっそりと録音していたナンバー。本作における神がかり的なソロはとにかく語り草で、この一曲が世界中のキッズにギターを手にとるきっかけを与えた。
すべてのトラックが崇拝に値する完成度の『Wheels Of Fire』は、2枚組としては異例のミリオン・セラーを達成している。しかし、かねてから人間関係の問題を抱えていたCreamは、本作がリリースされる頃には解散ツアーへ乗り出そうとしていた。この世界初のスーパーグループは、すでに崩壊の臨界点を迎えてしまっていたのである。