Kossoff, Kirke, Tetsu & Rabbit – Kossoff / Kirke / Tetsu / Rabbit (1972)
1971年のツアーの後に突発的な解散を迎えたFreeの4人のメンバーは、Andy FraserのToby、Paul RodgersのPeaceという2つのグループと、Simon KirkeとPaul Kossoffのコンビという形で分裂した。しかし、Freeが1年もしないうちに元のさやに納まったために、この空白期間に録音らしい録音が形になったのは、KirkeとKossoffが行ったセッションくらいだった。
Freeが来日中に出会ったベーシストTetsu Yamauchiと、本作に素晴らしい曲をいくつか提供もした稀有なキーボーディストJohn "Rabbit" Bundrick。このメンバーとともに繰り広げられる演奏は、今までのFreeらしいブルースの残り香を感じさせつつも、ギタリストKossoffの新たな一面をのぞかせている。
冒頭の「Blue Grass」のギターが放つ雰囲気などはまさに前者なのだが、意外にもこの曲の作者はBundrickだ。Kirkeがボーカルを執る「Anna」は穏やかなバラードで、のちにBad Companyのアルバム『Straight Shooter』で曲調はそのままにRogersが歌い直している。インストだがアルバム中で最も印象的なナンバーでもある「Just For The Box」は、Kossoffがのちに出す大曲「Tuesday Morning」のひな型と呼んでもいいだろう。
本セッションの成果は彼らののちの活動においても大いに意味があった。YamauchiとBundrickはそれぞれ再結成後のFreeにも参加することになる。そして何よりも、73年のKossoffのソロ・アルバム『Back Street Crawler』の録音の際には、Fraserも含めた〈Freeファミリー〉が一堂に会して最高のセッションを繰り広げている。