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Sonny Boy Williamson II – More Real Folk Blues (1966)

 シティ・ブルースのテーマはしばしば両極端に分類される。ひとつは自分の魅力をこれでもかと誇示するスタイルで、それは精力絶倫なMuddy Watersの「Hoochie Coochie」であり、たとえ無一文でも女性を喜ばせられるHowlin' Wolfの「Built For Comfort」である。
 しかし、一方では自分のみじめさを必死で訴えるようなブルースもあるが、こういった歌を歌わせればRice Miller “Sonny Boy“ Williamsonの右に出るものなどいない。彼の死後に発表された『More Real Folk Blues』は、チェッカー・レーベルのシングルを集めた編集盤の続編で、よりロックに接近した60年代のサウンドは多くの後進にヒントを与えた。
 ずばりなタイトルの「Help Me」は、重たいリフとチェス一派を支えた名ピアニストLafayette Leakeのオルガンをフィーチャーした名曲で、多くのロック・シンガーやハーピストがカバーしている。「Nine Below Zero」ではRobert Jr. Lockwoodのギター表現が、突き刺さるような女の冷たさに最高の説得力を与えている。
 若き日のBuddy Guyが参加している「Decoration Day」は、Sunnyland Slimがスロー・ブルースにアレンジして得意とした曲である。古くはJohn Lee “Sonny Boy“ Williamson(つまり一世のほう)も戦前に歌っていたナンバーで、興味深いことにMillerはJohn Leeのスタイルを踏襲している。
 極めつけはすさまじい「Somebody Help Me」だ。もはやなりふり構わないMillerは、愛する人以外の誰かに慈悲を乞うまでに追い詰められているが、サウンドと歌はこれ以上なく激しいもので、この一曲だけでも本作を聴く価値が大いにある。