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小澤征爾, San Francisco Symphony Orchestra & Siegel-Schwall Band – Three Pieces For Blues Band And Orchestra (1973)

 クラシック音楽の名門ドイツ・グラモフォンから発表された中で特にセールスを記録したのが、エレクトリック・ブルースのアルバムであることをあなたは信じられないだろう。シカゴのクラブでSiegel-Schwall Bandに出会い、その演奏に感銘を受けた小澤征爾は、先進的な作曲家Bill Russoに働きかけ、ブルースとクラシックの融合という奇想天外なコラボレーションを実現した。1968年のシカゴのオケによる初演は、クラシック愛好家の少々の動揺と熱い喝采をもって迎えられている。本作の録音が行われた1972年、Siegel-Schwall Bandは既にウッドゥン・ニッケルに移籍し、名作『Sleepy Hollow』などを発表した折でもあった。
 三部作からなる小品にはシカゴ・ブルースに対する最大の敬意が払われており、バンドの即興性の余地が十分にとられている。Paul Butterfield直系のプレイヤーであるSiegelはエレクトリック・ピアノとアンプリファイド・ハープを巧みに持ち替えながら、地元クラブで繰り広げられていた演奏をクラシック・ホールに見事に持ち込んでみせる。バンドとオーケストラの演奏の比重は紛れもなく対等であり、第一部はギター、ハープ、ストリングスが互いにソロを取り合いながら歩みを進めていく。第二部はコンマスであるStuart Caninのソロを交えながらのスロー・ブルースだ。Jim Schwallのギターはややおとなしいが、バンドとオーケストラはこのパートで最も強い一体感を得ている。第三部はブルースにおける最もシンプルな型の一つであるブギのリズムで、さらに有体に言えば「Help Me」のグルーヴのクラシカルな解釈である。大団円を飾るSiegelのハープ・ソロはまさに威風堂々といった趣だ。
 LP盤には「West Side Story」がカップリングされていたが、CD化の際はSiegelのソロを大々的にフィーチャーした「Street Music Op. 65: A Blues Concerto」と組み合わされている。ブギウギ・ピアノと重量感のあるハープを中心に繰り広げられるオーケストラル・ワークの迫力に関しては、こちらも引けを取っていない。