Emerson, Lake & Palmer – Pictures At An Exhibition (1971)
かつて『Concerto For Group And Orchestra』でDeep Purpleが挑んだ偉大な試み。つまりハード・ロックとクラシックを融合させるという実験は、30年の年月を経てMetallicaが『S&M』として完成させた。一方Emerson, Lake & Palmerは、ムソルグスキーによるピアノ組曲をスリーピースのロック・バンド向けに解釈するという大胆不敵な手法をとる。ワイト島で行われた実質的な初演は熱狂的な盛り上がりを見せ、その後の彼らのコンサートにおける重要なレパートリーとなった。
ラヴェルのオーケストラ用編曲を基にして展開される演奏は、緩急や抑揚の付け方が完璧そのものだ。演奏中幾度か入る「Promenade」の荘厳なバリエーション、プログレらしい緊張感に満ちた「The Gnome」や、目まぐるしい「The Hut Of Baba Yaga」での達人の演武のようなプレイには、クラシックの構成美とロックの轟音が共存している。
Greg Lakeによるアコースティック曲「The Sage」のようにオリジナルの楽曲が挟まる場面もあり、かなり自由な構成とも言える。Keith Emersonによる「The Old Castle」のアレンジは特にフリーキーだ。当時最新鋭のモーグ・シンセサイザーを駆使するEmersonのプレイは、純粋なサウンドとしても非常に革新的なものだった。
コンサートの締めくくりでは、かつてチャイコフスキーをB. Bumble And The Stingersがブギ風にアレンジした「Nut Rocker」(タイトルがなんとも洒落ている)を披露する。クラシックのクロスオーバーの傑作となった本作はEmerson, Lake & Palmerの実力を証明し、同年のアルバム『Tarkus』で得つつあった彼らの名声をより強固なものにした。