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The Rolling Stones – 12 X 5 (1964)

 ブルース・ファンには思い入れの強い数字というものがあって、例えばレコードの品番〈1427〉は、60年前のダートフォード駅でMick JaggerとKeith Richardのふたりを引き合わせたMuddy Watersのアルバムの代名詞だ。そして、『12 X 5』に収録された「2120 South Michigan Avenue」は、そのレコードを生んだチェス・レーベルの住所をそのままタイトルに据えた誠実なオマージュである。
 The Rolling Stonesが1964年の夏に発売した『5 X 5』はチェスのスタジオで録音された念願のEPだったが、アメリカの市場に向けてボリュームを拡大する必要があったため、やや粗削りな「Congratulations」のようなオリジナル曲が本国で数曲追加された。当時、Stonesの本領はR&Bの豪快なカバーにこそあった時代で、特に「Confessin' The Blues」はJaggerがBrian Jonesにも負けない渾身のハープを聴かせている。
 決定的な名演も多く生まれており、Bobby Womackの「It's All Over Now」はバンドに初めて英国シングル・チャートの1位をもたらした。興味深いことに「Time Is On My Side」は米国盤の本作にロンドン録音が、英国盤の『No. 2』にシカゴ録音が収録されている。Ian Stewartのゴスペルっぽいオルガンをバックに歌い上げられる力強いナンバーで、80年代のライブにも登場する重要曲となった。
 「Suzie Q」でのタイトなビートとRichardのとげとげしいギターは、Stonesが次第にやかましいロック・バンドへと変わりつつあった姿を捉えている。たとえ後の躍進を知っていようといまいと、このエネルギーに満ちたサウンドにはわくわくせずにはいられない。