Joy Division – Unknown Pleasures (1979)
70年代の終わりに生まれた『Unknown Pleasures』は、その硬質的で攻撃性の高いサウンドとIan Curtisの作る悪夢的な詞表現の両方で、その後のポスト・パンク・シーンに抗いがたい影響を与えた。プロデューサーのMartin Hannettは、エレクトリック・ドラムを交えたStephen Morrisのビートやガラスの割れるSEなどを効果的に用いることで、ライブでの印象とは異なるJoy Divisionの一面を引き出した。そういった点にはPeter HookとBernard Sumnerの両名による反発もあったが、「Interzone」のような激しいロック・ナンバーにはパンク・ギタリストとしての矜持のようなものが確かに感じられる。
強迫観念的に繰り返されるCurtisの言葉の数々は、男女の愛(「Candidate」)や宗教に対する皮肉(「Wilderness」)といったテーマ性を抱えているが、同時に聴き手の明確な解釈を許さない抽象性を持っている。啓示的な「New Dawn Fades」はもちろん、不滅のダンス・チューン「She's Lost Control」以上に死の冷酷さと自我崩壊の恐怖を描いた歌は無いだろう。ラストを飾る「I Remember Nothing」はアルバム中最もダウナーで、Curtisの暗く重たいボーカルがサウンドとよく調和している。
パルス信号を表したアートワークも、宇宙の中で凍えるようなCurtisの孤独がよく反映されたミニマル・アートの傑作だ。しかし残念なことに、ほとんどの復刻盤CDでは中心のモチーフが拡大されており、アナログ盤ジャケットで表現されていたこの完璧な構図は失われてしまっている。