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Mark-Almond – The Last & Live (1981)

 Jon MarkとJohnny Almondの名コンビはこのアルバムを発表するまでに様々なジャンルの変遷を経てきた。ブリティッシュ・ビートの潮流から飛び出し、John Mayallのブルース・バンドへ参加した後はいかにも英国的なごった煮のジャズ・ファンクを展開することもあった。
 彼らのたどり着いた先は、霧にけぶるニューヨークの街だった。演奏はAOR然としたスムース・ジャズを中心に展開されるが、特にBilly Joelのヒット曲「New York State Of Mind」などは彼らの持つ音楽性を伝えるには格好の題材と言えるナンバーである。きめ細やかなボーカルと哀愁に満ちたホーン、そしてMark Rossのセクシーなキーボードが原曲に引けを取らないアダルトな雰囲気を生み出している。
 白眉と呼ぶべきは26分にわたるジャム「The City」で、Carlos Riosによる卓越したギターはもちろん、ときおり遊び心を見せるAlmondのサックスに観客が盛り上がるシーンが印象的だ。ジャズ的な緊張感を湛えた前半から、ストレートでホットなブルースへ展開していくラストには喝采をもって応えるしかない。熱狂の後に再び演奏される「New York State Of Mind」とともに行われるメンバー紹介は、まるで1本の映画が終わった後に流れるスタッフロールのようだ。
 ジャズ、ブルース、ロックどれにも当てはまらない音楽性には一見してつかみどころというものがないが、それでも『The Last & Live』は彼らの真骨頂を捉えた傑作として讃えられている。なにしろ彼らの演奏は涙を誘うほどに素晴らしいのだから。