Duke Ellington – Jazz At The Plaza Vol. II (1973)
1958年にニューヨークのプラザホテルで開かれたコロムビア主催のパーティーでは、当時レーベルの看板を背負っていたMiles DavisやDuke Ellingtonのオーケストラがコンサートを行っている。この演奏は当初レコードになる予定はなかったが、その重要性をよく理解していたコロムビアのスタッフによって録音された。56年のニューポートのようにテープに不備が起きることもなかったため、70年代に入ってそれぞれ陽の目を見ることとなった。
「Jazz Festival Suite」と名付けられた組曲は、翌年に発表される「Toot Suite」の前身だが、構成などは全く変わっておらず本作の時点で既に完成している。まるで人の声のように巧みな表現をするHarold Bakerや、パワフルなバリトンを聴かせるHarry Carneyなど、ソロイストのホーンの存在感は圧倒的だ。「El Gato」ではCat Andersonがマシンガンのように危険なトランペットを放っている。
特筆すべきはCount Basieの楽団にいたJimmy Rushingと最晩年のBillie Holidayがゲストで参加していることで、これは二人が当時コロムビアと契約していたから実現した夢の共演でもあった。Rushingのブルースには思わず体が動き出す魅力があるうえに、「When Your Lover Has Gone」と「Don't Explain」を披露するHolidayの歌声に、同年のアルバム『Lady In Satin』にあったあの痛々しさが見られないのも新鮮な発見だ。
録音やミキシングに異を唱える者も多いが、ビッグバンドとジャズ・ボーカルの歴史が凝縮された演奏には、巨人Ellingtonひいてはアメリカ音楽の威厳さえ漂っている。