Sleepy John Estes – Electric Sleep (1968)
伝説のブルースマンJohn Adam Estesは、1960年代に入ってデルマーク・レーベルで再びレコーディングを行えるようになった。彼のスタジオでの作業には、常にYank RachellやHammie Nixonといった戦前からの相棒たちがそばにいた。
『Electric Sleep』はそんな彼らのサポートを伴わずに録音した初めてのアルバムだった。世界的なブルース・ロックのブームを受け、プロデューサーのRobert G. KoesterがEstesにエレキギターを持たせたことは確かに驚きだが、さらに驚異的なのは彼がそのエレクトリック・サウンドを見事に乗りこなしている、ということだ。
本作はアコースティックからエレクトリックへの単なる変換作業ではなく、カントリーとシカゴのバンド主義の邂逅でもある。ギターのJimmy Dawkins、Earl Hooker(今回はベースで参加)、ハープのCarey Bell、そしてピアニストSunnyland Slimという超豪華なメンツだが、実はSunnyland SlimとEstesの共演はこれが初めてではなかった。かつてヨーロッパのブルース・フェスで二人はセッションをした経験があったのだが、Hubert Sumlinのギターも擁していたこのバンド形式の演奏の中に、すでに本作のヒントが見出されていたのだとKoesterは言う。
本作は一言で言って大成功だ。「May West」でEstesはすっかりシカゴの男になりきっている。名曲「Drop Down Mama」や「Airplane Blues」も、タイトなリズムが加わったこともあり、既発のデルマーク録音から見事に生まれかわっている。戦前の「You Shouldn't Say That」を思わせるアップテンポな「I Ain't Gonna Sell It」から、スローで哀愁のある「Easin' Back To Tennessee」まで、聴き所は非常に多い。