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Junior Wells – You're Tuff Enough (1968)

 多くのブルース・ファンにとって〈J.B.〉とはJ.B. LenoirやJ.B. Huttoらのことを指す。しかし、ファンクの化身James Brownがブラック・ミュージック全体に与えた影響が、本作のように如実な形で表れていたこともまた、歴史の事実だ。当時ヴァンガードやデルマークといったレーベルから正統派シカゴ・ブルースを発表していたJunior Wellsが、マイナー・レーベルのブルーロックに残した変わり種が『You're Tuff Enough』である。
 タイトル曲である「You're Tuff Enugh」からして趣向は明確で、タイトなリズムはもちろん、ボーカルのスタイルやシャウト、挙句の果てには髪形(当時J.B.は『Get On The Good Foot』のような見事なアフロではなかった)に至るまでファンキーに染めあげている。収録曲のライティングは、ほとんどがブルーロック・レーベルのA&RマンだったJack Danielsとその相方Johnny Mooreによるものだが、Wellsの本分であるハープと深みのある歌がしっかりと活きているのはさすがだ。
 一方でBobby Blandの歌った「You're The One (That I Adore)」のような甘いバラードでは、Wellsはメロウなソウル・シンガーに変貌している。こうして本作を聴き進めると、意外にも定番の「Messing With The Kid」は劇的なアレンジがなされていないことにも気づかされる。伝統的なブルースのメロディで愛と花を讃えた「The Hippies Are Trying」も興味深い一曲だ。この曲がシングルカットされたのもまた時代を感じる選択である。