The Who – Live At Leeds (1970)
人を喰った冗談のようなジャケットに身を包んだ歴史的な録音。壮大なコンセプトと緻密に積み上げた構成によって生まれた名作『Tommy』の成功が強く反映されているにもかかわらず、『Live At Leeds』で聴かれるサウンドはラフで力任せだ。およそスタジオに収まりきらない暴力的な演奏だが、それこそがThe Whoの真骨頂である。
直前で行われたアルバム・ツアーでは『Tommy』の再現ライブが主だったが、本作のセットリストは考えうる最良のバランスで構成されている。A面ではMose AllisonやJohnny Kidd、Eddie Cochranといったロックンロールの古典を中心としつつも、B面では往年の名曲と最新曲が融合し、新たに生まれ変わっている。
シングルカットされたヘヴィ・ロック「Summertime Blues」は、後進のバンドがカバーする際にも模範とされることの多い名演である。「My Generation」は「See Me, Feel Me/ Listening To You」を挿入した壮大な展開だ。当時のライブではこの曲を長尺のメドレーにするのが恒例となっており、公演によっては30分を超えることもあった。
Roger Daltreyのボーカルは何らかのしがらみから解放されたようにのびやかだ。Pete Townshendのギターはアコースティックかと思うような繊細なバラードを弾くかと思えば、たちまちハードロックになだれ込んでいく。リズム隊であるJohn EntwistleとKeith Moonは、ジャムにおいては恐ろしいことにこの二人よりも自由である。ロックオペラの描いた巨大な世界観を、まさにステージ上でも凌駕するほどの力がThe Whoにはあったのだ。