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Aztecs – Live! At Sunbury (1972)

 〈オーストラリア版のウッドストック〉として知られるサンベリー・ロック・フェスティバルは、当時アメリカやイギリスといったメインストリームからほとんど無視されてきた、70年代初頭のオージー・ロック・シーンを知る格好の教材●●である。72年の開催の様子はフィルムにも記録されているが、映画としての構成もウッドストックをこれまた強く意識したものだった。
  その出演者の中で最も輝いていたのは間違いなくBilly Thorpe率いるThe Aztecsだった。子役上がりで50年代から活躍していたThorpeのステージでの堂々としたふるまいと、ハード・ブルースの爆発的なパワーが克明に刻まれたこのレコードは、ダブル・アルバムながら国内チャートで4位を記録するヒットとなった。
 「CC Rider」はThorpeのギターとBruce Howardのオルガンが共鳴する激しいロックンロールに、B.B. Kingのブルース「Rock Me Baby」は9分のスロー・ジャムになっている。あっと驚くようなアレンジがあるわけではないが、彼らの演奏には古典のカバーで陥りがちになる中だるみがまったく無い。Thorpeのオリジナル曲「Momma」は、Mountainを思わせるひずみの効いた激しいリフとシャウトが素晴らしい。
 本作が広く受け入れられたのは「Most People I Know Think That I'm Crazy」のようなポップなアンセム・ナンバーが、フェスという場にがっちりとハマったおかげもある。「Ooh Pah Pah Doo」はJessie Hillの書いたニューオリンズ風の明るいR&Bで、Thorpeのコールに応えるヒッピーたちは無邪気そのものだ。この曲は前述の記録映画のクライマックスにも使用されている。