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Toad – Toad (1971)

 英国メタルの重鎮Martin Birchが手掛けたことでも知られる『Toad』は、多くのハード・ロックおたくの心をつかみ続けてきた名盤の一つである。しかし意外なことに、バンドのリズム隊を務めたWerni FröhlichとCosimo Lampisのルーツは、ヨーロッパを股にかけた実験グループのBrainticketだ。それを踏まえれば、Black Sabbathに迫るヘヴィさを湛えたナンバー「Cotton Wood Hill」が、Brainticket時代のアルバムの題名と同じであることにもきっと気がつくだろう。
 バンドの主役であるギタリストのVic Vergeatは、Jimi HendrixやRoy Buchananにも似たとげとげしいサウンドで、まるで鼓膜に刻み付けるようなブルースを奏でる。「Pig's Walk」のような複雑な曲では、実力派のFröhlichとLampisがつばぜり合いのようなセッションを繰り広げる。
 「They Say I'm Mad」は絶妙に力の抜けきらないスロー・ブルースで、Benj Jaegerのハスキーなボーカルの味わい、Vergeatのやかましいナイフのようなギターが鳥肌ものだ。また、再発盤のCDには必ずと言っていいほど収録されているシングル曲「Stay!」にも触れないわけにはいかないだろう。プロト・メタルのお手本ともいえるこの曲は、ファースト・シングルながら彼らの本国であるスイスのチャートに登場した。
 Toadが正当な評価を受けるようになるには時間がかかったが、非英語圏のヘヴィ・ロックがすでに円熟の域に達していたことは本作が証明している。