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Funkadelic – Cosmic Slop (1973)

 『Maggot Brain』でファンクの金字塔を打ち立て、サイケデリック・ロックからスペース・ミュージックに移行するなかで、George Clinton率いるP-Funkの音楽性はメンバーのラインナップとともに急速に拡大していった。
 Jimi Hendrixの影響を受けた二人のギタリスト(Garry ShiderとRon Bykowski)が放つロック・サウンドは、Eddie Hazelのギターと同様に強烈だ。自由な雰囲気と遊び心のある「Nappy Dugout」や、ツイン・ギターが印象的な「Let's Make It Last」は、重厚なホーンがなくとも上質なファンクは作れるということの何よりの証明だ。
 どぎついメンバーのファッションやサイケなビジュアル(今作からおなじみの画家Pedro Bellが手掛けるようになった)、そして歌詞にちりばめられた露骨なセクシャリゼーションに気を取られ、Clintonの痛烈なメッセージに気づかない人もいるだろう。ライブの定番曲となる「Cosmic Slop」には、貧しい家族のために体を売る母親が、社会から悲痛な仕打ちを受ける様子が容赦なく描かれているが、サウンド自体にはとても恍惚的なグルーヴが満ちている。ベトナム帰還兵を取り扱った「March To The Witch's Castle」はかなり直截的な反戦歌だ。
 アルバムの売り上げは芳しくなかったが、本作の翌年にParliamentが復活したおかげでP-Funkは2つのバンドが織りなす一大音楽プロジェクトとして地位を確立していくことになる。