Albert King – Live Wire / Blues Power (1968)
サンフランシスコの若者がトリップに夢中になっていたころ、Albert Kingはロックの殿堂であるフィルモア劇場で白人聴衆を相手取り、ブルースマンの持つ様々な顔を見せた。それはHerbie Hancockのジャズ・ロック「Watermelon Man」をファンキーかつソリッドに解釈する名アレンジャーとしての側面であり、突き刺すように鋭いチョーキングを放つギターの妙であり、そしてゴスペルで仕込まれた豪快な歌い手としての実力でもある。
Kingは「Blues Power」の語りの中で、ブルースという音楽は誰の中にも存在しうるものなのだと宣言している。完全無欠のスロー・ナンバー「Blues At Sunrise」や、おなじみの3連リフを披露する「Please Love Me」はブラス隊を伴わない最小限のバンド編成で表現された最も理想的なブルースだ。
アウト・テイクとなった音源(90年代にリリースされ陽の目を見た)の中にはシカゴ系やテキサス系といった豊富なブルースの素材が含まれており、ここにもKingの強い意欲が垣間見える。10週にわたってビルボードのリストに載った『Live Wire / Blues Power』のロックへの影響力は決定的だった。のちに後進アーティストと積極的に交流したことからも伺えるように、彼ほどブルースとロックの架け橋となった人物はいない。