James "Son" Thomas – The James "Son" Thomas Album (1985)
ミシシッピ出身のJames "Son" Thomasは、辛い小作人時代の経験を悲しげなブルース・ギターに乗せて歌い上げてみせる。しかし、他のブルース・マンとの大きな違いを挙げるとすれば、彼はギタリストだけでなく、非常に独特な個性と哲学を持った粘土彫刻家としても知られていたことだ。かつて墓堀人として働いた経験から、人間の頭蓋骨に異様なこだわりを持つようになったという彼の作品には、ヴードゥーにも似た土着的な不気味さが漂っており、『The James "Son" Thomas Album』のアートワークでも印象的に使われている。
本作は82年のアメリカン・フォーク・ブルース・フェスティバルの音源を中心に構成される彼のライブ・アンソロジーで、ラインナップは「Standing At The Crossroads」や「Stormy Monday Blues」のような古典が多く占める。ブルースとしては珍しいモチーフの「Beefsteak Blues」は彼の有名なオリジナルだ。「The Real Catfish Blues」ではMuddy Watersがヒットさせた「Catfish Blues」の歌詞を独自に解釈している。Thomasの持ち味はフォーク・スタイルだけではなく、CD盤で追加された「Smokey Mountain Blues」ではエレキ・ギターも披露している。
90年代に亡くなるまで〈最後のデルタ・ブルースマン〉として讃えられてきたThomasだが、彼のレパートリーは死後に息子であるPat Thomasに歌い継がれた。2013年にウルフ・レーベルから発表された作品集は、父親に負けず個性的な一枚だ。