見出し画像

Daryl Hall & John Oates – War Babies (1974)

 Hall & Oatesは人々が思っていたよりもずっと野心的かつ反骨精神にあふれたコンビで、アトランティック・レーベルが提示した〈耳ざわりの良いソウル・アルバム〉という要望を本作で見事に一蹴してみせた。プロデューサーに大物Todd Rundgrenが起用されたおかげもあってか、録音段階における検閲●●は入らず、レーベル側が本アルバムの驚くような全容を知ったのは、スタジオにおける全ての制作作業が終わった後のことだった。
 「Is It A Star」のプログレッシブなギター・ソロ(ここではRundgrenではなくRichie Cernigliaが弾いている)を聴けば、それまでのフォーク・ロック志向のファンが逃げ出してしまったのも無理はないと思うだろう。Daryl HallはRundgrenによる自由なサウンド・メイキングを極力受け入れる方針をとり、本作には「Can't Stop The Music (He Played It Much Too Long)」のような、一聴しただけではどうやって出しているのか分からないほど手の込んだアレンジの歌も多く生まれた。
 ギターだけでなくボーカルにも遠慮なくエフェクトが駆けられているが、HallとJohn Oatesがおりなすハーモニーの美しさは言わずもがなで、「You're Much Too Soon」などは特に際立ったポップスである。一方で「70's Scenario」は、その歌詞に輪をかけたような暗いファンク・ロックのサウンドに仕上がった。
 本作の商業的な不振をきっかけに二人はアトランティックから三行半を突きつけられたわけだが、『War Babies』は疑いようもなく重要な作品である。80年代の華々しい成功を予感させることはないにしても、Hall & Oatesの不退転のアティチュードはこのレコードにしっかりと感じることができるからだ。