Charlie Musselwhite – Stand Back! (1967)
粗野で武骨なシカゴの美学を感じるこの不敵な題名のアルバムは、ボーカルでハーピストのCharlie Musselwhiteをリーダーとしつつも、内容的にはビッグ・ジョンズ・クラブのセッション仲間だったBarry GoldbergとHarvey Mandelらと力を合わせて作り上げたアルバムといえる。UKや西海岸の同世代の若者がR&Bや古い伝承歌をサイケデリックに彩るのをよそに、彼らは幼いころから身近にあった黒人音楽の伝統を実直かつ果敢に解釈しようとしていた。
Musselwhiteの重要なレパートリーの一つとなった「Christo Redemptor (Cristo Redentor)」はもともとDuke Pearsonによるナンバーで、彼の繊細なブロウとGoldbergのソウル・ジャズを意識したオルガンのメロディが印象的だ。最近ではピクサー映画『ソウルフル・ワールド(原題:Soul)』のサウンドトラックでJon Batisteが披露したのが記憶に新しい。ハーピストとして避けられない一曲である「Help Me」はまるで重戦車のようにヘヴィなリフで進んでいき、ボーカルもまた堂に入っている。特に革新的なサウンドを発していたギタリストMandelの、うねりを上げるように自在に歪むソロには、ロック・ファンには抗いがたい魅力があふれている。ブルース・ロックの定番となる「No More Lonely Nights」や「Early In The Morning」のほか、ラスト2曲の「4 P.M.」と「Sad Day」はGoldbergとMandelがそれぞれ作曲したオリジナルで、二人の個性が活きている。
彼らとPaul Butterfieldに共通していたのはバンド・メンバーに黒人のベテランが含まれているという点で、ベースにはJames Cotton Bandで長く活躍することになるBobby Andersonが起用された。ドラムを担当したのはFred Belowだ。彼については今更何も言うことはないだろう。