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Bill Haley & The Comets – Rock Around The Country (1971)

 ロックンロールの黄金時代を彩ったBill Haleyの70年代の活動は主にコンサート・ツアーに費やされていたが、カントリー少年だった彼のルーツを伝える本作のような名品も生まれている。ナッシュビルのミュージシャンであるCurly Chalker、Hargus Robbins、Karl Himmelらを迎えたバンドは、南部の豊かな気風に満ちた音楽を展開しており、50年代とはまた違った彼の新たな魅力の発見がある。
 「Dance Around The Clock」のような相変わらずの曲もあるが、John Fogertyが生んだ「Who'll Stop The Rain」や「Travelin' Band」(The CometsのメンバーNick Nastosのギター・ボーカルは一聴の価値ありだ)のようなナンバーが入っているのも、当時のリバイバル系アルバムにたびたび共通する点といえる。
 「Me And Bobby McGee」はHaleyがレコーディング中に何度もハミングしていたというお気に入りの一曲で、Chalkerのスライド・ギターやJimmy Riddleのハープが見事なカントリー・テイストをもたらしている。Riddleはなんとも器用な男で、ジャウ・ハープや時にコミカルな猫の形態模写さえも駆使してセッションを彩ってみせた。
 「There's A New Moon Over My Shoulder」はワーナー時代からのファンにはおなじみの名曲だが、本作ではサックスを抑え、代わりに強力なギター・ソロが前面に出ている。特に心に染み入るのはRobbinsの切ないピアノで始まる「A Little Piece At A Time」のようなバラードで、Haleyのシンガーとしての懐の深さも証明する一曲だ。