Muddy Waters – They Call Me Muddy Waters (1971)
1967年のMuddy Watersは、『Super Blues』シリーズの一連のセッションや、Luther "Snake Boy" Johnsonを中心にしたアルバム『Mud In Your Ear』にサイドマンとして参加するなど、今までではちょっと考えられなかった活動にも手を出すようになっていた。だが、そんな時期でもシカゴでのレコーディングはしっかりと行なっていた。
セッションは一言でいって絶好調だ。後にWatersの右腕として活躍するPinetop Perkinsが参加し、非常にファンキーで充実した録音が8曲生まれている。しかし、これではLPとしてまとめるには少なかったのだろう。結局これらは50年代のレアな音源と合わせてコンパイルされ、編集盤『They Call Me Muddy Waters』として71年に発表されることになった。
「When The Eagle Flies」の歌詞の中でドル札を鷲に例えるのは、ブルースマンにはおなじみのレトリックだといえる。ブルース・ロック時代のJohn Lee Hookerを思わせるブギのリズムが印象的だが、続く「Crawlin' Kingsnake」は時代が飛んで59年の録音だ。これもHookerが有名にしたブルースの名曲で、Little Walterの思い切りのよいハープのブロウを聴くと、不思議と懐かしい思いがこみ上げてくるようだ。「Blind Man」で繰り広げられるPerkinsのオルガンとOtis Spannのピアノの競演は軽快そのもので、いつまでも聴いていたい気分にさせる。
タイトル・トラックの「They Call Me Muddy Waters」はその名の通りWatersが高らかに名乗りをあげるナンバーで、WalterのハープとJimmy Rogersを擁したツイン・ギターとが最高の瞬間を生みだしている。この見事な黄金時代のアンサンブルは、名実ともに偉大なブルースマンのテーマ・ソングになった。1983年5月に行われたWatersの葬儀の際、シカゴにあるメトロポリタン葬儀場の礼拝堂ではまさにこの曲がかかっていたのだ。