Albert Ayler – In Greenwich Village (1967)
Albert AylerはESPディスクでの活躍の後、NYのグリニッジ・ヴィレッジで録音された本作で大手インパルス!レーベルからのデビューを飾った。ジャズ・ブルースの研究家LeRoi Jonesは彼をいち早く〈名手〉と評価した一人だが、時代に先行した音楽に対する当時の注目と評価は、Aylerの意志と歴史的な功績に見合っていたとは言い難いだろう。例えばこのサイケなジャケットひとつ取っても、Ayler自身の言う〈愛を表現した純粋な音楽〉を表すにはやや短絡的なきらいがある。
直後のJohn Coltraneの死によって、1曲目の「For John Coltrane」は否応なく注目を浴びるナンバーになったが、Aylerにとって重要だったのは録音当時の会場にColtrane本人が居合わせていたことだった。とはいえ、テナーのプレイに偏重するようなことにはなっていない。Michel Samsonのヴァイオリンと、Joel Friedmanのチェロ、そしてAlan SilvaとHenry Grimesのベースという重層的なストリングスのメロディに呼応するサックスは、なんともしなやかで美しいものだ。
「Truth Is Marching In」は分厚いビブラートで増幅された〈行進曲もの〉だ。弟のDonald Aylerのトランペットとともに繰り出される勇壮なサウンドとアヴァンギャルドなプレイが交互に飛び出す展開は、従軍時代にドイツの軍楽隊から大きな影響を受けたAylerの十八番のパターンである。
本作は、ジャズの時代が事実上ColtraneからAylerへと移り変わる瞬間を切り取っている。だが音楽面でも精神面でも、AylerがColtraneと別れを告げることができたのは次作の『Love Cry』だった。このアルバムの中で、彼は痛切なボーカルを交えたりして新たな創造の扉を模索しようともがいている。