Wet Willie – Wet Willie (1971)
Wet Willieはそのデビューと同時に、Duane Allmanの死を受けて雲行きが怪しくなりつつあったカプリコーン・レーベルの命運を背負わされてしまった。彼らのデビュー作である『Wet Willie』は、Allmansに似た〈いなたい〉ブルース・フィーリングと、堂々とふるまうJimmy Hallの力強いボーカルが南部アラバマらしいからりとした陽の気を放っている。
「Dirty Leg」はJimmyの弟にあたるベーシストJack HallとキーボードのJohn Anthonyによるナンバーで、リズム隊の持ち味を活きたがっしりとしたグルーヴを中心としながら、Jimmyがブルース・ハープを高らかに吹き鳴らすスワンプ・ロックの傑作だ。Wet Willieの最大の武器は彼の天才的なハープで、シカゴ・ブルースの巨人Jimmy Reedによるクラシック「Shame, Shame, Shame」のカバーにおいて最大に開花している。
スロー・テンポの中で個性を見せるのはAnthonyのオルガンだ。悲哀に満ちた「Beggar Song」のソロは、まるで日曜日の教会に迷い込んだかのような荘厳さをたたえている。美しいバラード「Faded Love」も印象的で、これを書いたライターのFrank Friedmanは録音にこそ参加しなかったが、このアルバムのために実に4曲もの歌を書き下ろしている。
バンドが傑作アルバム『Keep On Smilin'』でレーベルを背負って立つ存在となるのはもう少し先の出来事だ。しかしWet Willieの独自のスタイルが本作ですでに確立されていたのは明らかで、ブルース、ロックンロール、ゴスペルなどあらゆる黒人音楽の愛好家の琴線にいとも簡単に触れてみせるのだ。