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Melton, Levy & The Dey Bros. – Melton, Levy & The Dey Bros. (1972)

 かつてCountry Joe McDonaldとのグループで活動し、ウッドストックで高らかに〈F**K〉を掲げる怒れる若者だったBarry Meltonは、70年のバンドの解散とともにヴァンガード・レーベルへの置き土産であるアルバム『Bright Sun Is Shining』を残した。そこではDonny Hathawayのピアノとともに泥臭いブルースを歌い上げていたが、連名で発表された72年のアルバムでは、憑き物が落ちたかのようなさわやかなソフト・ロックを展開している。
 Meltonは彼ひとりだけでも最高のシンガーだ。だが、巧みなキーボード奏者であるJay Levy、そしてRick & Tony Deyの兄弟(Tonyはサイケ・ポップのThe Matchでドラマーを務めていた)の全員が素晴らしいボーカリストでもあり、底抜けに明るい「Ooh, Ooh, Ooh」や強力なゴスペルを見せつける「S.O.S.」の完成度などは特筆に値する。
 ファンキー・ロックの名曲「Closer」の豪快なスライド・ギターは、プロデューサーとしても貢献したMike Bloomfieldによるもので、彼はまた「Newsboy」において職人的なプレイでカントリー風の曲調をけん引している。ハイライトは特にハードなサウンドで決めた「Taxpayer's Lament」で、ここに限りMeltonはかつての反戦歌手としてのアイロニーに満ちた姿勢を取り戻している。
 アルバムのラストは、アカペラとバンドの演奏をつなぎ合わせた短いトラックで締めくくられる。作品全体を潔く象徴したポストリュードだ。