J.B. Hutto & His Hawks – Hawk Squat (1968)
シカゴ・ブルースの雄Joseph Benjamin Huttoがこのアルバムを発表した1968年、アメリカの音楽雑誌ダウンビートは〈より知られるべきバンド・コンテスト〉という記事のなかで彼のバンドであるHawksを紹介している。かつてゴスペル・グループでじっくりと仕込まれたパワフルなボーカルが評価されたのはもちろんのこと、なんといってもElmore Jamesをシカゴ中追いかけ回してモノにした豪快なスライド・ギターによってもたらされた栄誉と言える。
「Hip-Shakin'」などはHerman HassellのベースとFrank Kirklandの自在なドラムを擁したほとんど完璧に近いシカゴ・ブルース・ナンバーだが、影のMVPはやはりSunnyland Slimということになる。「20% Alcohol」のように卑近だが幅広い歌の題材や、アルバム後半のキーボードを交えたソウル・ジャズにも似た音楽の展開は、晩年にアンビギュアスな領域へ昇華してしまったJamesのブルース世界からのある種の独立宣言のようなものでもある。ブルースというフォーマットが許さなかったのか尻切れトンボで終わってしまうものの、「Hawk Squat」のセッションは白熱した出来だ。ここではHuttoは我を抑えており、Dave MyersのベースやMaurice McIntyreのサックスがそれぞれ冴えわたる場面をしっかりと生み出している。
HawksがKirklandを含めたメンバーでアルバムを作ったのはこれ限りだ。Huttoのギターの真価が何をおいてもライブにあるのは間違いないが、それは彼らが全盛期にスタジオ録音を残す機会を逸していたということでもあると言える。本作を聴けば分かるだろうが、Huttoは曲のライティングも含めて実際はかくも器用なギタリストなのだ。