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Big Jay McNeely – Recorded Live At Cisco's (1963)

 1950年代初頭、ロサンゼルスにあるオリンピック講堂で歴史的な写真が撮影された。ステージの上で仰向けになって豪快なサックスを吹く若き日のBig Jay McNeelyを捉えた一枚だが、特に象徴的なのは客席にいる白人の若者たちの姿だった。ある者は熱狂的な眼差しでMcNeelyを見つめ、またある者は陶然として演奏に聴き入っているその光景は、ロックンロールが人種の壁をまさに叩き壊さんとする瞬間を切り取ったものだった。
 さすがに60年代にも入るとMcNeelyのやり方はもはや古典の域に達していたが、彼はしっかりと観客を躍らせることが出来た。その証拠に「Big Jay's Count」では数をカウントアップ・ダウンするだけ、というあまりにも単純な方法でオーディエンスを盛り上げてみせる。熱いブラスの嵐の中であえてクールにふるまう「Perdido」のギター・ソロや、Jimmy Reedがヒットさせたクラシック・ブルース「You Don't Have To Go」のスローなリズム。これらの全ての要素がMcNeelyのサックスのサウンドと見事な調和を見せている。
 「Further On Up The Road」はEric Claptonがブルース・ロックとして完成させたバージョンが特に有名だが、こちらはラフなブルース・ハープとサックスのブロウ合戦で興奮が増幅されており、荒々しさという点で言えばこのテイクが最高の演奏だ。
 キャリアに浮き沈みのあったMcNeelyは70年代には既に引退状態にあったが、その後カムバックを果たし精力的に録音を残した。本作はクレジットについて不明な点が多く録音状態も決して良好なものではないが、ロックンロールの持つ最も根源的な歓びを体感するならばこれ以上のアルバムは無いだろう。