The Cats – Cats As Cats Can (1967)
のちにオランダの代表的なポップ・ロック・グループへと成長するThe Catsのあゆみは、いとこ同士だったPiet VeermanとJaap Schilderの二人からなるボーカル・デュオから始まった。名字は同じでも、ソングライティングの要でもあるメンバーCees VeermanとPietの間には血縁関係はない。彼らにはコーラスという信頼のおける武器があり、また英語で歌が歌えたこともアメリカのマーケットへ進出する足掛かりとなった。
アルバムに収録されている曲はオリジナルとカバーを問わず、彼らの美しい歌声が活きるものばかりで、例えばThe Escortsが前年に歌った「Night Time」は翳りのあるブルー・アイド・ソウルだ。「Without Your Love」はCeesの筆による上質なチェンバー・ポップなのだが、この曲とともにシングルとなったのが、英国の曲作家コンビCook-Greenawayが書いた「Sure He's A Cat (Lovin' Like You Wouldn't Believe)」だ。彼らはこのアルバムに4曲もの素晴らしい歌を書き下ろしている。Ceesはもうひとつ「But Tomorrow」というナンバーも書いた。これはTheo Klouwerの力強いビートが印象的であると同時に、Beethovenの交響曲のフレーズをさりげなく引用する遊び心も持っている。
翌年のシングル「Times Were When」の大ヒットから始まった彼らの黄金時代は、70年代の中ごろまで続いた。アルバム『Take Me With You』あたりから濃くなってくるフォーク・カントリー色は本作ではまだなりを潜めているが、The Catsの真骨頂であるボーカルの美学は、驚くことに最初からすでに完成していたのである。