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Alexis Korner's Blues Incorporated – R&B From The Marquee (1962)

 The Rolling StonesやThe Yardbirdsの演奏でロックの聖地になる以前は、ロンドンにある〈マーキー〉はもともとジャズやスキッフルの演奏で有名なクラブだった。マーキーと同様にジャズからそのキャリアをスタートさせたAlexis KornerとCyril Daviesが61年に自らのR&BバンドBlues Incorporatedを結成したときに、英国ブルース・ロックの歴史は始まった。
 名前のイメージに反してライブ盤でもなければ、ましてやマーキーでの演奏が収録されているわけでもないが、『R&B From The Marquee』はロンドンのシーンで流れていたサウンドを的確に切り取っている。KornerとDaviesの模範となったのは、誰の耳にも明らかだがシカゴのバンド・サウンドであり、彼らのスタイルには黎明期特有の試行と情熱があふれている。
 「I Got My Brand On You」や「Tiger In Your Tank」など、Muddy Watersに心酔した選曲が目立つ一方で、ジャズ・スタンダードのようなオリジナル「Keep Your Hands Off」では、単なるブルースにとどまらないポップさも垣間見える。Kornerのギターはアコースティックで奥ゆかしいが、DaviesはLittle Walter風の存在感のあるブロウを披露し、サウンドの要を担っている。また、若き日のDick Heckstall-Smithはジャズ・バンド仕込みのサックスを聴かせており、Long John Baldryは「How Long, How Long Blues」など数曲でリード・ボーカルを執って本作に変化と彩りを添えている。原曲であるLeroy Carrの雰囲気を見事に活かしたKeith Scottのピアノに対して、Baldryはソウルに傾倒したボーカルで個性をにじませている。
 『R&B From The Marquee』にはブルースとジャズが絶妙な距離感で共存しているが、皮肉にもそれが仇となり、あくまでもシカゴ・サウンド志向にこだわったDaviesの脱退を招いた。1964年に亡くなった彼にとっては本作はほとんど遺作に近い作品となっている。後にグループはロックの重鎮となる人物を数多く輩出していくが、英国ブルースの祖にはKornerだけでなくDaviesの名が連なってしかるべきなのである。