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Grand Funk – We're An American Band (1973)

 Grand Funkというグループは、シングル・ヒットには恵まれないながらもアルバムの売り上げは凄まじく、スタジアムを熱狂に包みはするが評論家には目の敵にされるバンドだった。Terry Knightとはすでに袂を分かっていた彼らは、新たな高みに挑むために5万ドルという大枚をはたいて天才プロデューサーTodd Rundgrenを迎えた。そしてかつてない熱量でアルバムの先行シングルの「We're An American Band」を発表したのである。
 カントリーを意識したようなカウベルのリズムに始まる斬新さと、Craig Frostのキーボードを力強く押し出したメロディが功を奏したのはもちろん、なにより画期的だったのはドラマーDon Brewerを主役(ボーカル)に据えているところにある。「We're An American Band」は、Mark Farnerのハスキーなボーカルと10分をこえるブルース・ジャムというGrand Funkの従来のイメージを一新する一曲だった。
 アルバムには他にも、現代風なワークソングである「The Railroad」やFrostのキーボードが冴え渡る「Black Licorice」などが収録されている。セカンド・シングルとなった「Walk Like A Man」もかつてなく高い水準のロックンロールであり、大胆な金ピカのジャケットにふさわしい内容となっている。今作で初めて登場し、現在はおなじみとなっている挑発的な〈指さし〉のロゴは、まるでゴールド・ディスクになることを予告するかのように映る。本作は見事プラチナ・ディスクに認定され、ついでに批評家からの上々な評価も得た。
 のちにオーストラリアのスーパー・グループThe Dead Daisiesが『Live & Louder』の中で「We're An American Band」をカバーして話題になっている。だが、たとえ宇宙人が歌ったとしても、この曲が史上最強のアメリカン・ロック讃歌であることに変わりはないのだ。