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The Blues Project – Live At Town Hall (1967)

 本格的かつ先進的なブルースをウリにしていたThe Blues Projectだが、本作を録音するころには、すでにAl Kooperと他のメンバーたちの音楽的な行き違いが極限にまで達していた。ホーン・セクションの導入という目論見がフイになったKooperは67年の春に脱退してしまうが、そのフラストレーションはBlood, Sweat And Tearsの結成という形で昇華していくことになる。
 そうしたゴタつきもあってか、本作は完全なタウンホールにおけるライブ作品ではなく、あまつさえスタジオ録音に歓声をオーバーダブした音源まである。しかし、10分以上に及ぶ「(Electric) Flute Thing」のジャジーな演奏は、一介のブルース・バンドでは到底及ばない緊張感をはらんでいるし、Kooperの狂気のオルガンとDanny Kalbの激しいギターとのつばぜり合いを聴けば、手に汗握らずにはいられないはずだ。
 「I Can't Keep From Crying」はBlind Willie Johnsonによる古典ブルースをプログレッシブに解釈した名演だ。「Love Will Endure」はThe Blues Projectにとってヴァーヴ・フォークウェイズの同門歌手だったPatrick Sky(本作のジャケット・デザイナーであるDavid KriegerはSkyの作品にも携わったことがある)によるナンバーだが、ここではSteve Katzがフォーク・ロック・サウンドに乗せて渋いボーカルを聴かせる。いくつか疑似ライブ音源が続くが、「Wake Me, Shake Me」でふたたび興奮と熱気がよみがえる。絶叫と轟音が入り乱れるラストは圧巻だ。 
 発表後にバンドは実質的な解散をむかえ、Andy Kulbergを中心としたグループであるSeatrainのファースト・アルバム『Planned Obsolescence』が、契約上の理由によりThe Blues Project名義で発表された。KooperとKalbがふたたび相まみえるには、73年のセントラル・パークにおけるドラマチックなリユニオン・コンサートまで待つ必要がある。